第40章 さようなら
十二番隊─
「紫苑、紫苑…」
目の前に深い眠りに落ちている紫苑
名前を呼ぶまでに随分時間がかかった
喉元まで出かけていたその名前を、何度も飲み込んだ
「ん……ぅ……」
静かに目を開け、体を起こす紫苑
「夜一……さん?」
「紫苑」
紫苑の目が徐々に大きく開いていく
「喜助さんはっ!?」
咄嗟に立ち上がろうとした紫苑を制する
離してください!と暴れる紫苑を力の限り肩を押さえる
「紫苑、落ち着いて…落ち着いて聞くのじゃ…」
そして伝えた
隊長格八人に起こった悲劇、それに関わった喜助がこれから何をしようとして、何処へ行こうとしているのかを…
「嘘ですよね…」
紫苑は下を向いて低い声で、その声は怒りにも似ていた
「いくら夜一さんでも許しませんよ…」
「…嘘ではない」
「…………」
心が追い付かない
夜一さんが何を言っているのか、理解したくもない
「紫苑、覚悟を決めるのじゃ…」
「覚悟…?」
「喜助と離れる…覚悟じゃ」
ポタッポタッと涙がこぼれる
「いや……だ……」
「紫苑…」
「嫌だっ……離れたくない!だって、だって、ずっと一緒にいるって…約束したもん!!どこにも行かないって!!」
夜一は思わず紫苑を抱き締める
「やだ……よぉ……っ」
夜一さんの胸で、たくさん泣いた
震える肩を、抱き締めてくれるのは…いつも、あの人だったのに
どれくらい泣いただろうか
夜一さんはずっと私の傍に居てくれた
「紫苑、喜助は双極の地下にいる。奴が此処をたつまで予定ではあと15時間程じゃ…」
夜一は紫苑に霊圧を遮断する外套を着せた
「儂はちと戻って様子を見てくる」
紫苑は何も答えない
「早まる可能性も充分にある。それまでに覚悟を、決めるのじゃ…」