第40章 さようなら
"楽しみだから、ちゃんと寝る!"
かわいーんスから…
ちゃんと寝てるみたいだから、まぁいいんスけど…
奥の研究室で出来上がった指輪を眺めながら、紫苑の笑顔を思い出していた
そしてもう一仕事に手をかけようとしたとき、急に睡魔が襲ってきた
…─
ガンガンガンガンガンガンガンガン─!!!
っ……またあの夢……
今までにないくらい鮮明に、ハッキリと耳に、脳裏に突き刺さるけたたましい音
目が覚めたら、隣に喜助さんは居なかった
ガンガンガンガンガンガンガンガン─!!
どうして…
夢はもう覚めたはずなのに…
どうして……あの音が……
心臓がザワつく……
血の気が引いていく
恐怖が、暗闇が紫苑の心を支配する
紫苑は部屋を飛び出していた
喜助さんの発信器の反応がある一番隊舎に向かった
胸の鼓動はどんどん大きくなっていく
一番隊舎から散り散りになる隊長たちの霊圧……
隊首会だったことは容易に想像つく
その中に喜助さんを見つける
「ハァ……ハァ……」
「紫苑……」
私は瞬歩で移動していた喜助さんの前に立った
「…そんなに走ったら、貧血で倒れちゃいますよ。まだ、寝てたほうが…」
つい先程までは、起きるのを今か今かと待っていた…
でも、状況が変わった
紫苑を危険に巻き込みたくない…
「どこに行くの…」
不穏な空気の漂う護廷隊
緊急の隊首会
紫苑が不安に思うのも無理はない
「ちょっと流魂街に、行ってきます」
「行かないで!」
ボクの両腕を掴む紫苑の目が不安に染まっていた
「お願い…行かないで……」
震える紫苑を落ち着かせるように抱き締めた
「すぐ戻るから…」
「嫌!行かないで!喜助さんっ、傍に居…」
紫苑の目から涙がこぼれ落ちる瞬間、紫苑の意識を飛ばした
「ごめん…」
十二番隊舎に戻り、紫苑を寝かせた
そして隊舎に隠していた外套を手に取る
「すぐに、戻るから…」
紫苑に唇を落として、ボクは隊舎を後にした