第38章 今度は失わないように
喜助は紫苑から再びネックレスを受けとると、紫苑の後ろにまわりネックレスを装着した
「卍解して打ってみて」
紫苑は頷く
「卍解 百花繚乱花吹雪」
変わらずに結界が張られ、それを喜助と夜一にも張る
「花紋」
杖の先端、水晶玉を中心にエネルギーが集まる
いつもはそのエネルギーに耐えきれずに振り切ってしまっていた
けど今回は少し違う
いつも膨張し続けるエネルギーと違って、ある程度のところでエネルギーの集まりが落ち着いた
そこで杖を振るうと、以前ほどの威力はないものの、強制睡眠に入ることはなかった
「私、起きてる…」
「いい感じっスね」
「これでも充分な威力じゃの」
「ありがとう!喜助さん」
威力は落ちたけど、正気を保っていられるのが嬉しかった
「お安い御用っスよ」
紫苑は強制睡眠に入らないのを良いことに、卍解の鍛練に励んだ
「そういえば、喜助さんの卍解はどんなやつなの?」
紫苑は素直に疑問に思ったことを聞いた
喜助は顔色を変えずに優しく答える
「それはまだ秘密っス」
「えぇー」
紫苑は秘密を作られたのがちょっと寂しかった
拗ねたようにシュンと落ち込む紫苑を見て、チクリと胸が痛んだ
「いつか、教えてあげるね」
喜助は紫苑の頭を撫でる
あの研究が完成したら…ね
「ところで初めて卍解した日、海だけは無事でしたね?」
喜助は夜一と温泉の修復をしているときに、部屋の端の海部分が全くの無傷だったことに驚いていた
「あぁそれは、花紋を打った時海まで影響が及びそうだったから、咄嗟にあそこ一帯に結界を張ったの」
「そうだったんスか」
「喜助さんが私の為に作ってくれた海だから、どうしても壊したくなくて…」
「そんな無理して…全く」
喜助は紫苑をぎゅっと引き寄せた
この子はもっともっと上に行ける
鍛えればもっと成長する
卍解時の霊圧を抑えてもらったことで、修行もはかどり、たくさんの技を教えてもらって、喜助さんや夜一さん相手に実戦させてもらって、なんとか形になってきた