第23章 私、諦めませんから…!
私より琴乃のほうが怒ってる…
4日間…あの子は喜助さんの近くに居るんだ…
その甘い香りを漂わせて
その細い手で、喜助さんに触れるの…?
「紫苑、紫苑…大丈夫?」
「えっ…あ、うん…」
翌日─
昨日の夜は喜助さんは忙しくて帰れない、と連絡があった
今日からしばらく会えないのに…
今もまだ研究室にこもっているらしい
「揃ったか。そろそろ出発するぞ」
討伐隊のリーダーの先輩が指揮を取る中、紫苑はキョロキョロしていた
「はぁ…」
「隊長と会えてないの?」
「うん…」
諦めて歩きだそうとした時
「紫苑!」
「喜助さん!」
喜助は紫苑に辿り着くなりぎゅっと抱き締めた
「昨日帰れなくてごめんね」
「ううん、いいの。忙しいのに来てくれたの?」
「心配っスもん。それに会いたかったし」
「私も会いたかったっ」
名残惜しそうに強く抱き締めあった
「気を付けるんスよ?色々と」
「色々って?」
「男とか…ね」
ギロリと喜助は討伐隊の男に殺気をおくった
「な、何もしませんよ!浦原隊長」
「私がついてるから大丈夫ですよ」
「琴乃サン、よろしくお願いしますね」
「じゃあ喜助さん、そろそろ行くね」
「うん、いってらっしゃい」
去り際に軽く紫苑の頬にキスをすると、2人は別れた
「行ったみたいやな」
「ひよ里サン…なんで男と組ませるんスか」
「しゃーないやろ。紫苑も席官や。ウチかて考慮してやりたいけどなァ…」
席官にしないほうが、良かったんスかね…
嫌、そんなこと決めたボクが言うもんじゃない
「帰ってきたら、いっぱい構ってやり」
「え?」
「最近の紫苑、何や上の空やったから…」
「上の空…?」
「心配ごとが尽きんのやろ…例えば…」
そう言いかけたひよ里の目線の先には
「浦原隊長っ。こちらにいらっしゃったんですね」
「東園寺サン」
「呼びに来たんです。もうみんな集まってますよ」
さりげなく喜助の袖に触れる手
これから数日間、何も無いとええんやけど…
「それじゃひよ里サン、これで」
喜助は凛音に手を引かれるように、技術開発局へ向かった