第21章 保護者みたァやな
身体を洗い終え、湯船に入ったのを合図かのように、喜助が浴室の扉を開けた
「え、待って…喜助さんも入るの?」
「ダメ?」
そ、そんな子犬みたいな顔でちょっと寂しげに見つめられたら…
いつもは喜助さんは遅くまで仕事をしているから、お風呂に一緒に入ったことは、実は一度もなかった
「恥ずかしい…」
「じゃあ暗くしよっか」
そう言っていくつかあるスイッチを押すと、明るかった照明がゆっくりと落ちていって、変わりに間接的な照明がいくつか光りだす
「綺麗…」
「ロマンチックでしょ?紫苑だけの特権」
トクン─
胸が弾むのを感じる
特権なんて言われてときめかない女がいるだろうか…
「なーにチラチラ見てるの?」
「み、見てませんっ」
割れた腹筋、大きな背中、しっとり濡れた髪…
なんか、ドキドキしちゃう
「い、いつの間に照明つけたの?」
ドキドキして直視できなくて話題を変える
「んーついこないだ」
「全然わからなかった」
「紫苑が喜んでくれるかなって」
全くこの人は私を喜ばせるのがうまい
自分のために…なんて言われたらときめかずにいられない
「ありがとう…」
って気を抜いていたらザブンッと波が大きく揺れる
「なんでそんな離れてるんスか?」
「だだだって、恥ずかしいもん」
「今更っスか?もう何度も見てるじゃないっスか」
「そ、それとこれとは別っていうか…」
いいからおいで、と長い手に引かれて引き寄せられる
いつもと違う感覚に戸惑いを隠せない
手を動かせば触れる素肌
温かな体温はお湯のせいだろう
濡れている─
それだけでいつもより胸が高鳴る
後ろから抱き締められてふわっと香る同じシャンプーの匂い
「…あの人大丈夫?」
あの人?
一瞬誰だかわからなかった
「あぁ、彼女っスか…まさか紫苑に水かけるとは思わなかったっス」
「ふふっ…私も」
紫苑の濡れた髪をしっとり撫でるとクスッと肩をすくめる
「告白されたの?」
「ん。妬いた?」
「全然」
後ろからでも強がってるのがわかる
「ふ~ん」
紫苑が向こうを向いてるのを良いことに、ボクはニヤケが止まらない
「…嘘、ちょっとだけ」
かーわいいっスねぇ…