第16章 喜助さんに…見せないで!
リョウが紫苑の胸の膨らみの先端を咥えようとした
その時…
バキッ!!!───ドンッ!!!────
「ってぇ…!誰だ!?」
「人の彼女になにしてくれてんスか?」
「浦原…喜助…!」
「なにしてくれてんのかって聞いてるんスよ?」
喜助の目には殺意がたっぷりこもっていた
「見ての通りだよ!お前の大事なモノを、奪ってやるんだよ!」
「ボクを恨んでるなら、ボクにやればいい。紫苑は関係ない」
「ふざけるな!俺の大事な、麻美を奪って捨てておいて!…だから、お前の大事なコイツを…!」
「麻美…」
尻餅をついたまま射殺すように喜助を見上げる
「あぁ、彼女っスか。最近まで名前も忘れていた」
喜助は羽織を脱いで、紫苑にかけた
そして再びリョウに向き直り
「その麻美サンがアナタの大事な人だとして、ボクが奪ったというのはおかしな話だ」
「お前…!」
「ボクは確かに女の人にはだらしなかったかもしれません。だけど…自分から誘うことは一度も無かったんスよ」
「嘘だ!お前が麻美をそそのかしたんだろ!じゃなけりゃ、麻美が…だって、俺たち…あんなに愛し合っていたのに…」
リョウの表情が段々と曇っていく
「麻美をどこへやった?!なぁ、アイツ…消えたのか?どうして…」
「さぁ…ボクには分かりません」
静かな怒りに満ちている目が、リョウをとらえた
「話は終わりっス。…さてと、ここで殺してほしいっスか?」
耳元で、静かに囁いた
「あぁそれとも、人体実験に協力してもらいましょうか?」
「…くそっ。俺はお前を許さない!」
リョウは走り去っていった
「紫苑!!」
紫苑は苦しそうに胸を押さえてうずくまっている
彼が居なくなって緊張が取れたんだろう
「ハァ…ハァ……」
喜助は紫苑の手首に巻かれた腰紐をほどくと、紫苑の持っていた吸入器を口に当て優しく背中をさする
「大丈夫……大丈夫だから……」
「ハァ……き……す……ハァ」
紫苑は両手で喜助の死覇装を掴みながら呼吸を整える
トロンとした目から流す涙を見てられず、紫苑を自分に引き寄せる
呼吸が落ち着いてきた紫苑はそのまま喜助の腕の中で意識を失った