第8章 最後の夜
「どうしたの?」
「……いや」
「なに?」
「……あの、…大きいな、と思って」
イルミは若干目を大きくする。そして言葉を返してきた。
「女は好きなんじゃないの?」
「……それって前にそういう事を言う人がいたんでしょ」
「そっちこそ大きいって誰と比べてるの」
イルミの指摘は耳から抜け、自分の主張だけが頭を回った。
日頃からそこまでヤキモチ妬きであるつもりはない。可愛い嫉妬は恋愛を盛り上げるメソッドのひとつとの認識だ。
ただ、イルミは恋愛ごとには興味はないと言っていたのに それを覆されるようでどうしてももやもやした考えが芽生えた。
惹かれた相手の過去が気になるのは当然の事、しかし過ぎ去った事柄に不毛な詮索をしても何にもならないのも事実だ。
これ以上空気を崩さぬようにと 弱い溜息をつく。拗ねた顔はそのままに、美結は甘えた声を出す。
「でも……今日は私のものだもん」
はだけたズボンの隙間から手を差込み、下着の中に指を侵入させる。熱を帯びるそれを出来るだけ優しく握る。直に触れればやはり質量はそこそこだ。そのまま上下にゆっくり手首を動かしてゆく。
反応は薄く見えるが 時折手の中でピクリと小さな動きを感じる、それがたまらなく嬉しくて 手の動きが少しづつ加速する。
伺うように、イルミに顔を寄せた。淡いリズムをつけてそれを扱き続ければ イルミは時々眉を寄せる、瞳をキリと細くする。快楽を滲ませる表情を見ているだけで、もっともっと崩してみたいと欲が出てしまう。
「……イルミ 気持ちいいの?」
「うん。気持ちいい」
「……かわいい」
「男のよがる顔の何がかわいいの?」
全てが可愛いし愛おしい、そう言う代わりに もう片手を被せるように丸い先端部分に添えた。
指の腹でふんわりくぼみを撫でれば 染み出る液が絡んでくる。それを塗り付けるよう 先をするするなぞりながら、根元から先端を強弱をつけながら何度も何度も扱いてゆく。観察するようにイルミの顔を覗き込んだ。
「……ミユさ」
「ん…?」
「いや いい。」
無意味な会話の後、イルミの両手が美結の頬を包み 顔を上に引きよせられた。先の展開は予想がつく、攻められながらキスをねだるなんて随分と甘えん坊ではないか。美結は目元を細め唇の力を抜く。