第3章 気温が下がったのは気のせいかな
待ち合わせ場所が近付くと
キョロキョロと彼の姿を探し始める。
「…あ、」
ネイビーのPコートにグレーのセーター
深い緑のチェックシャツがちらりと見え
遠目に見ても"爽やかはこちらです"と
案内板が書かれていそうな。
そんな彼が寒そうにコートに手を突っ込み
駅前のベンチに座っている。
「……、」
その姿を見て急に緊張し始め
足が止まると
彼が私に気付いて立ち上がる。
ヤバイ、と思って走り
息切れしながらお待たせ、と言った私に
「あっぶねえなあ、コケないでよ」
と微笑む彼。
「………、うん、」
男友達のような砕けた話し方なのに
どこか清潔感のある印象で
育ちの良さ伺える彼は
私が知る同世代の男の子とは
少し違う。
彼も言っていた、
それがギャップというものなら
自分のことをよくわかっていると思う。
このギャップを嫌いな人は
いないだろう。
計算なのか、それとも自然とそうなるのか
どちらかまだわからないけれど、
これが私だけに見せる顔だとしたら
嬉しいかもしれない、
そう思う私は
彼の毒が回ってきている。