第21章 ☆Bad END☆ エピローグ ー主人公編ー
「っ……」
(私は、全てを捨てたんだ……これまでの人生も、憲吾も……)
「ゆり様、いくらかラクになりましたか?」
「っ伊集院さん……」
頭痛が取れたゆりは悟のほうへ首を向けた。
そして悟は水の入ったコップを持っていた。
「お水をお飲みください。
軽い脱水症状を起こしております。」
「ありがとうございます……もらいます。」
ゆりは悟からコップを受け取り水を飲んだ。
_ゴクッ…「……ふぅ、」
「……お気持ちの変化はいかがです?」
「……もちろん、私が今好きなのは響さんですよ?だって、
ここに来ると決めた時から全てを捨ててきたんですから(微笑)」
「っ…ゆり様……」
何も心配いらないと言わんばかりの笑みを見せるゆり。
「それじゃ、響さん帰ってくる前に戻りますね。」
「っはい、私のほうからも東郷様には仰いませんのでご安心ください。」
「ありがとうございます。それじゃ、」
ゆりは悟に軽くお辞儀をすると
自分の部屋へと戻りスマホを取り出しLINEを開いた。
「明日、いよいよ響さんと憲吾が対峙する……憲吾はきっと、
私がついていくまで諦めないはず……憲吾がこれ以上こっちの世界に
足を踏み入れるのはオリンピックに出る夢の邪魔になる。
今のうち、何か手を打たなきゃ……その為にはまず……」
現在のLINE友達一覧にはわずか数人のみ、
だがこの中で唯一頼れそうな人物が一人いた。
「……宙さん出てくれるかな、」
(あくまでこのスマホは元々私のスマホじゃないし……)
唯一外部と繋がれる手段は宙のみ、
ゆりは宙へ電話をかけることにした。
「……もしかして、仕事か練習中かな……」
コール音が続き宙はなかなか電話に出なかった。
だがゆりが諦めかけた時にコールが止み宙の声が聞こえた。
『っもしもしゆりちゃん!?
急にどうしたの!?』
「っ宙さん……お久しぶりです、突然連絡してすみません……」
『っ……オレのこと、覚えてんの?』
「はい……今日、
響さんが留守の間に伊集院さんに頼んで解毒剤を飲んだんです。
それで全て、思い出しています。宙さんのことも……」
『っ……なに、三船くんのところに帰りたくなったの?』
「……違います。」