第21章 ☆Bad END☆ エピローグ ー主人公編ー
「このまま何も知らないフリなんて……できません。」
「っ……」
真っ直ぐ悟の目を見ながら言うゆり、
ゆりの決断は固いものだと悟も察した……。
「伊集院さん、お願いです!
記憶を取り戻す薬があるならください!
私は響さんから聞きました、
私の恋人だった人は三船憲吾さんだって……
そんな事実を知った以上、やっぱり黙って知らないフリなんて……
それに、そうしないと三船さんも納得してくれないと思うから……」
「っ……」
頭を深く下げお願いするゆり、
だが悟はすぐ首を縦には振らなかった。
「っ……解毒剤はあります。
ですが以前の記憶と現在の記憶が混在した状態となるのです。
もちろん以前の貴女と今の貴女では人格なども違います。
記憶を取り戻せば、
自分自身が混乱し壊れてしまう可能性もあるんですよ?
以前の貴女が三船憲吾という男を本気で好きでいたのならなおさら……」
悟は表情を歪めながらゆりに解毒剤のことを話した。
だがそれでもゆりの意志は揺らがなかった。
顔を上げた表情から伝わってきた……。
「私は、何が何でも響さんを好きでいます。
どのみち前の私を取り戻してもDolceの藤ヶ谷ゆり、
三船さんの彼女であった藤ヶ谷ゆりには戻れません。
今更、帰る場所なんてもう藤ヶ谷ゆりにはないんです。
私が東郷ゆりとして生きて行く以上、
自分から藤ヶ谷ゆりという人格を捨てないといけないんです。」
「っゆり様……」
「だからお願いです、解毒剤をください。
私はどんな真実も受け入れる覚悟はできています。
それに、時間ももう無いんです。明日には響さんと三船さんが会います。
これ以上あの人にこっち側の世界に足を踏み入れてほしくないんです。」
「っ……」
「お願いです、伊集院さん……私を、信じてください。」
「っ……」
強い眼差しで悟を見るゆり、悟は長い沈黙の末……
「っ……わかりました。
ゆり様がそこまで仰るのなら解毒剤を差し上げましょう。」
「っありがとうございます!」
「……ですが、解毒剤も強い薬です。
飲んだ直後は苦しい思いをするかもしれませんよ?」
「それでも構いません。」
「……では、」