第20章 ☆??ルート☆ Bad END
「ごめんなさい響さん、実は私あの日……
私が藤ヶ谷ゆりだって知った時ね……伊集院さんのところに行って
お願いしたの、もし『記憶を取り戻す薬があったら欲しい』って……」
「っ!?」
「……。」
思いがけないゆりの告白に驚きを隠せない響、
その事情を知っていた悟は顔を少し俯かせた。
「っゆり……?」
(どういう事だ?ゆりの記憶は既に戻ってるのか?)
「なーんか、予想外の展開になってきたかも……」
「おい伊集院、お前ゆりに解毒剤を渡したのか……」
「私も、最初はお断りしたのです。
記憶が戻れば混乱し精神的に壊れる恐れがあると……」
「っ……ならお前、やっぱり昨日は……」
「っ……」
響はゆりに目を向けた。
そんなゆりの表情は悲しそうに涙を浮かべていた。
「ゆり様は、たとえ全ての記憶を取り戻し
彼の全てを思い出しても東郷様を選ぶ、とおっしゃいました。
以前の "藤ヶ谷ゆり" はもう居ない、
これからは "東郷ゆり" として生きていくと……」
「っ!?」
(ゆり?
どういう、事なんだよ……)
「……。」
悟の言っている言葉の意味がわからず憲吾は後ろに一歩後ずさった。
その一方で樹は眉間に眉を寄せながら響達の方へ目を向けていた……。
「……響さんも、
昨日はわざとあのレストランに連れて行ったんでしょ?
私が記憶取り戻してるかもって……」
「っ……」
「響さんが勘付いていたとおり、
私はここに来る前の記憶全部思い出してたの……。
だから、レストランに行くまでの道のりも覚えてたし、
レストランでパパとキラちゃんに偶然会ったことも……」
「っお前……」
「黙ってて、ごめんなさい……でも、
このままじゃ響さんもずっと引き摺ると思ったから……
"憲吾" にも、
このままにしておく訳にもいかないって思ったから……」
ゆりは憲吾のほうに目を向けながら言った。
憲吾はただゆりを見ることしかできなかった。
「っゆり……」