第19章 ☆Story36☆ 分岐点
ゆりが憲吾に別れの電話を入れた翌日、今日は午後から仕事なので
学園に登校中だった。ゆりがいつもの見慣れた通学路を
歩いているとその先の十字路の左側から東郷と思われる男が現れた。
「っ……」
「よぉ……今日は朝から学校か、ご苦労なこった……」
真正面で向き合うゆりと東郷、生憎2人以外の人物はいない。
「っ……おはようございます、
響 ヒビキ さん……」
「っ……おいてめぇ、その名前……」
「昨日宙さんから聞きました……貴方の名前……」
「ッチ……また余計なことを言いやがったなアイツ……」
「……。」
遡ること1日前、ゆりと宙がまだ楽屋にいた時のこと……
ゆりは直前まで泣いていたが今は泣き止み涙を拭っていた。
「ゆりちゃん、大丈夫?」
「っはい……大丈夫です、」
ゆりは『大丈夫』と言うと服を整えた。
服を整え終わったゆりは羽織っていたパーカーを宙に返した。
「パーカーありがとうございます……」
(そういえば、
憲吾もホテルの部屋で過ごした時上着掛けてくれたっけ……)
「全然いーよ!
……ねぇ、ゆりちゃんはオレの彼女になってくれるの?」
「っ……それは、やっぱりできません。」
「えぇ!?
さっきは『好き』って言ったじゃん!」
「っそれは……雰囲気で……」
「……やっぱり三船くんがいいの?」
「っ……憲吾とは、別れるつもりです。」
「ふーん、そうだなんだぁ……ん?えぇぇぇ!?」
響は少し後ろに引きながら驚いた。
「……。」
「っ何で急に……」
「っそんなの……さっきだって宙さん言ったじゃないですか、
こんな私見たら憲吾も幻滅するって……」
「っそれは、そうだけど……本気?」
「本気です……」
「……オレの彼女にもならない、三船くんとも別れる……
もしかして、兄貴のモノになるつもりなの?」
「あの人のモノにもなるつもりはありません。
ただ、誰かを好きになるのはやめようと思っただけです。
私はアイドル・Dolceの藤ヶ谷ゆりですから……」
「……三船くんと出会う前の自分に戻る、的な?」
「そう言うことになりますかね……」