第19章 ☆Story36☆ 分岐点
佇む2人をよそに宙はタイスケの手を振り払うと
ゆりを起き上がらせ頭を撫でた。
「……ゆりちゃん、ずっと服乱れたままで寒いでしょ?
それにオレ以外の男の人も居るし……
しばらくオレのパーカー着てなよ。」_ふぁさっ
「っありがとう、ございます……」
「「っ……」」
宙はゆりの頭を撫でた後自身が羽織っていたパーカーを脱ぐと
ゆりに被せてあげた。
その一連の動きはまるで "恋人" のようだ。
思わず涼介とタイスケの2人はそう感じてしまった……。
ゆりはパーカーで前を隠すと
涼介達に一瞬目を向けた後目線を逸らした。
「っ……」
「ゆりちゃん大丈夫?
でもこれからはオレがゆりちゃんの側にいるよ?
もう寂しい思いだってさせないから……」_ギュッ…
「っ……」
「「っ…!」」
宙はゆりを抱きしめた。
ゆりは抱き返すことはなかったが拒絶することはなかった……。
2人は「信じられない」と言う表情を見せた。
「ゆりちゃんは、寂しかったんだよね?
なんか北京ではグループ総出で事件に巻き込まれてたみたいだし
三船くんとも簡単には会えないんでしょ?……そりゃそうだよね。
結局アイドルとただの高校生じゃ住む世界が違うんだからさ……」
「っ……」
ゆりは宙の言葉に涙を浮かべた。
宙はゆりの肩をトントンと優しく叩いた。
「もう忘れなよ、"アイツ" のこと……
ゆりちゃんが苦しむだけだよ……」
「ぅ!…ぅう……うう…!」
「「っ……」」
そしてゆりはその場で泣き崩れてしまった。
宙はただゆりを優しく抱き涼介とタイスケはそれを見るしか
できずその場からゆりと宙を引き離す事ができなかった。
「……山田さん、ゆりちゃん勝手に連れ出してごめんなさい。
でもしばらくこうさせて下さい。
ゆりちゃんが、泣き止むまで……」
「っ……みたい、だね……」
「っ山田さん!」
「俺らは一旦外に出よう……俺らは楽屋の前にいるから……
ゆりちゃん、落ち着いたら出ておいで……行くよ、藤ヶ谷くん。」
「っ……」
涼介はまだ納得していないタイスケの腕を取って楽屋から出た。