第18章 ☆Story35☆ 揺れ動くココロ
剛太が停まっているスポーツカーを気にしつつも
公園を一通り走ることにした。
そして街並みを一望できる展望台に近づくと2人の男女の姿が見えた。
だが女の方はまだ未成年っぽくよく見てみれば剛太もよく知る少女だった。
「っ……ゆり?
なんでゆりがここに……しかもあの男は誰だ?
明らかに三船でも事務所の人でもなさそうだ……」
剛太は走るのをやめ2人の視界に入らないよう
茂みの方へ移動し2人の様子を伺った。そして目を凝らして見れば
男の方もどこかで見たことあるような風貌だった。
「っ!?
まさかあの男……東郷か?」
なんとゆりは東郷と星の丘公園に来ていたのだ。
剛太は驚きを隠せない様子で2人を見た。
「っあの時見た東郷と同じだ……なんでゆりがアイツと……
まさか無理やり連れてこられて……」
だがゆりは嫌がっている様子はなく噴水を見ており
東郷も心なしか穏やかな笑みを浮かべている様にも見えた。
「っわぁ……綺麗……」
「気に入ったようだな。」
「っ……両親の、思い出の場所ですから……」
「っゆりの両親とゆかりもある場所だったのかよ……
アイツ、それを知っててここに……?」
剛太が2人の様子を見ていると東郷はそのことを察したのか
こちらの方を横目で見た。
剛太はその場でしゃがみ気配をできるだけ察せない様にした。
「……ッチ、誰かがこっちを見てるな……」
「え……?」
「予定より早いが、ずらかるぞ。来い。」_グイッ!
「きゃっ!」
東郷はゆりの手を引きそのまま駐車場に向かっていった。
「っゆり……!」
(気配はできるだけ消してたはずなのに、すぐ勘づきやがったか……
やっぱり一筋縄でいくような相手じゃないな……このこと、
櫻井さんにも早く報告しねぇと……)
剛太もできるだけ悟られないよう駐車場の方に移動し
車が発進する前に車のナンバーをスマホで撮影した。
_カシャッ「っ……東郷の足取りになればいいけど……」
間もなくゆりと東郷を乗せた車は発進した。
ここまで走ってきていた剛太は追いかける事ができず
ただ発進させていった方向を見るしかできなかった。