第18章 ☆Story35☆ 揺れ動くココロ
剛太を見上げることしかできないゆり、
ゆりはできることなら全て打ち明けてしまいたいと思った。
それほどに剛太の目はゆりを本気で心配していることが
伝わってきたのだ、一昨日の憲吾と同じ様に……。
「ゆり……
事務所の人やお父さんにも言えないような事なのか?」
「っ……」
(荒木先生は、
本当のこと言わない限り納得してくれなさそうだけど……
だからって東郷さんのことを話せないよ……)
「っゆり……何で悩んでるかまでは聞かない。
けど……悩みはあるんだよな?」
「っ……」
(そんな真っ直ぐな目で見られたら、思わず喋ってしまいそう……
それくらい真っ直ぐな瞳……それに先生は、
もう私が問題を抱えていることは知ってる……せめてそれだけなら……)
ゆりは意を決して剛太の問いに縦に頷いた。
「っ先生ごめんなさい……今は、何も言えません……
でも少しだけ、スッキリしました……ありがとうございます……」
「ゆり……」
「せんs_ぎゅっ…っ!」
突如剛太に抱きしめられるゆり、
また抱き枕代わりにされたのかと思った。
「っ先生……こんな時に抱き枕にしないでくださいよ……っ!」
(あれ……?この感覚どこかで……同じ様なことが確か……)
だが剛太から感じた温かいぬくもりはある人物と重なった。
「今は、無理して言わなくていい……けど、
話す気になったらちゃんと言えよ?
俺は、何があってもゆりの味方だ……守ってみせるから……」
「っ……!」
(っそうだこの感じ……
あの時から感じていた違和感は、この人だったんだ……)
ゆりが剛太と重ねた人物、それは……
「っ……仮面、ティーチャー……」
「っ!」
ゆりがふと口にした言葉は「仮面ティーチャー」。
そう言葉にした瞬間、剛太の腕が少し反応した様に見えた。
「っ……」
(まさか……仮面ティーチャーの正体って荒木先生?
今感じるこのぬくもりは、憲吾と一緒に抱きしめられた時と同じ……)
そしてゆりは思わず涙を流した……。