第17章 ☆Story34☆ 代替試合
「着いたよ!」
「今日はありがとうございます。」
「こっちこそありがとね!
ゆりちゃん、せっかくだから外まで送ってあげな?」
「っえ!?」
「俺はちょっと……電話するところがあったんだよなぁ……」
『……私も櫻井さんに連絡することがあったのよね……』
涼介は白々しくスマホを取り出し操作する素振りを見せた。
キラも何かを察したのか何やら連絡をするような素振りを見せる。
(2人してわかりやすいなぁ……苦笑)
「……周りに人もいなそうだし、途中まで一緒に行ってもいい?」
「っあ、あぁ……」
ゆりと憲吾は車から降り憲吾の自宅まで歩くことにした。
念の為ゆりは帽子を深く被りメガネもかけた。
「……今日は、ありがとな。
応援に来てくれて……」
「ううん、あんなに間近で憲吾の試合が見れてよかった……
やっぱり、悔しかった?」
「……まぁな。
けど、敗因は俺にあったからあの結果に悔いはない。
……あのさ、」
「ん?」
「吾郎の試合の途中、抜け出していたけど大丈夫だったのか?
どこか具合が悪かったとか……」
「っううん!昨日アイス食べてお腹冷やしちゃってたみたいで
ちょっとお腹壊してたみたい(苦笑)
でもあれきりスッキリしたから、本当に大丈夫だよ?」
ゆりは悟られないように明るい表情で答えたが
憲吾は少し眉を顰めており完全に納得している感じはなかった。
「……。」
「っ……」
(憲吾……勘付かないといいんだけど……それにしても、
この様子も東郷さんやその部下の人はどこかで見てるのかな……)
ふと周りを気にするゆり、
そして歩いているうちにアパートの目の前まで着いた。
「っあっという間だったね……憲吾の部屋は2階だっけ?」
「あぁ……」
「……部屋の前まで行っていい?
せっかく涼介さん達が気を使ってくれたし、
できるだけ憲吾と居たいから……」_ギュッ‥
ゆりは憲吾の裾をギュッと掴んだ。
「お前が、大丈夫なら……」
「っうん……!」