第17章 ☆Story34☆ 代替試合
「俺は、もう大丈夫だ。
だからそこで、見ていて欲しい……」
「っ……憲吾(微笑)」
憲吾の言葉に安心したゆりは微笑みながらも再び涙を浮かべた。
だがその涙は悲しみの涙ではなく嬉しさの涙だった。
「……やっぱり、ゆりちゃんとは結構いい間柄みたいだね。」
「だったら何だ……俺にとってゆりは、大切な人だ。
もうあんな顔にはさせねぇよ……」
「ふーん……まあいいや!
そんじゃ、ラストいい試合にしようじゃん。」
「そうだな、」
(俺は俺らしいスタイルで戦えばいい……
それで勝てなかったらまた努力すればいいだけのこと。
今俺にできる事をこの試合にぶつけるんだ……)
気持ちを切り替えてはじまったラストの第3ラウンド。
泣いても笑ってもこれが最後の勝負となる。
序盤から再び攻防戦を繰り広げる2人だが第2ラウンドまでの疲労が
取れきれていない憲吾は足をふらつかせながらも体制をキープし
宙の攻撃に耐えながら冷静に見極め攻撃をかましていった。
_ドガッ!
「ぐッ!……っフラフラのくせにまだそんな余裕あんのかよ……笑」
「お前も、一向に体力に余裕あるみてぇだな……」
「オレの最大の強みだからねぇ……けど、意外だよ。
もっと早いうちにダウンするかと思ったけどここまで耐えるとはね……
そろそろ限界きてるでしょ?」
「試合もあと1分を切る……ここまできてダウンするかよ。」
(あと1回でも膝をついたら終わりだ……絶対に耐えてみせる……)
「っ憲吾……」
ゆりも固唾を呑んで憲吾を見上げていた。
そして繰り返される攻防戦、まだ体力に余裕のある宙が優勢な状態は続き
鋭い攻撃を幾度なく与えられる憲吾。
「っ…!」
(膝は絶対につくな……耐えろ……!)
「うらあっ!!」_ドゴッ!
「ぅぐッ…!」_ガクッ…
「っ憲吾!!」
立て続けられた攻撃にいよいよ膝をついてしまった憲吾。
ゆりは思わず席から立ち上がった。
「っ…クソッ……!」
カウントが終わる前に何とか立ち上がる憲吾、だがその足は覚束なかった。
残り時間はあと10秒、ここから逆転するのはほぼ絶望的だった。
最後の力を振り絞り拳を構えるが腕に思うように力が入らなかった。
「っらあ…!」
「もうお前の負けは決まってんだよ!」