第17章 ☆Story34☆ 代替試合
無意識でもゆりを悲しませてしまったことを悔やむ憲吾、
だが今までのことは取り返すことはできない。
「っ……」
『アンタのファイトスタイルが本来どんなのかは私にはわからない。
でもいつものアンタじゃないってことはわかる。
ゆりを、これ以上悲しませないで。』
「っキラちゃん……そんなにゆりちゃんのこと……」
『大好きだよ。
アンタたちに負けないくらい私だって……
でもゆりのことを大好きな人はいっぱい居るから。
もっとゆりのこと大切にしないと、すぐ誰かに奪られちゃうよ。』
「っ!」
『……試合の勝ち負けより、もっと大事なこと忘れてるんじゃないの?
たとえそんな気持ちのまま勝ったとしても、ゆりは喜ばないよ。』
「っ……そうだな……
俺、どうかしてたみたいだな……」
(やっと吾郎や神部先生の言ってたことが理解できた……
今までの俺は、ただ勝つことだけを考えてた……
でもこの試合は勝敗だけが全てじゃない。
俺自身を見てもらう為の試合、本来の俺を忘れていたらそこでお終いだ。)
キラの言葉で冷静さを取り戻した憲吾、そのタイミングで
休憩終了の合図が鳴りいよいよ第3ラウンドが始まろうとしていた。
憲吾は再びリングに上がり吾郎と神部は憲吾を見守った。
キラは憲吾を見送ると再び元の場所に戻り椅子に座った。
「っキラちゃん……憲吾達と何話してたの?
なんか頭も叩いてたけど……」
『ゆりの代わりに喝入れてきた。
多分、もう大丈夫だから。』
「っキラちゃん……ありがとね?(微笑)」
「私はゆりの悲しむところを見たくないだけ。
またゆりを泣かすことがあったら許さないよ。」
「ふふ……ありがとう(微笑)」
(憲吾……貴方もきっと悔いの残らない試合ができるはずだよ……
いつもの憲吾なら、きっと大丈夫だよ……)
ゆりは涙を拭うとリングに顔を向け最後の試合を見守った。
「……あれ?
さっきと雰囲気変わったね……」
「あぁ……お前の言葉を真に受けて、
冷静さを無くしてたらしいからな……けど、それもここで終わりだ。
俺は俺にできる事をする。」
憲吾は宙にそう告げるとゆりの方に顔を向けた。
「っ……」
(憲吾……)
「俺は、もう大丈夫だ。」