第17章 ☆Story34☆ 代替試合
吾郎の試合を見守っている憲吾は
チラホラとゆりたちの方を気にしながら見ており
先程まで席を外していたゆりが戻ってきた。
「……。」
(結構席外してる時間長かったな……何かあったのか?
顔も変わらずイマイチ優れていないような……)
憲吾はしばらくゆりを見ていたが
もうすぐ試合の終わる吾郎達の方に目を向けた。
そして試合終了のゴングが鳴り勝敗の結果は……
『10ー9で赤・諸星聡の勝利!』
「っまさかアンタがここまで強いなんて思ってもみなかったよ……
良い試合でした、ありがとうございました。」
「こっちこそありがとな。
高校最後の大会、お前と対戦できてよかったよ。
まあ勝てなかったのが若干の心残りだけどな……でも、悔いはねぇ。
ありがとよ。」
吾郎と聡は互いに手を取った。
アリーナ全体には拍手喝采が贈られゆりも拍手を送った。
_パチパチパチ
「ナイスファイトです!」
(負けちゃったけど、観てて凄く気持ちいい試合だったなぁ……
次はいよいよ憲吾と、東郷宙さんっていう人と対戦……)
ゆりは拍手を送りながら憲吾を見た。
憲吾は上着を脱ぎ試合に出る準備をしていた。
「っ……憲吾……」
ゆりは小さく憲吾の名前を呟きながら見つめ続けた。
そしてゆりは対戦相手側の方にも目を向けてみた。
次の対戦相手である東郷宙も上着を脱ぎウォームアップをしていた。
最の弟ということもあり顔の作りは似ていた。
「っ……」
(あの人が東郷宙さん……憲吾、頑張って……絶対に勝ってね……)
こうして吾郎と聡の試合が終わり2人はリングの外に出た。
だが聡は自分のベンチには戻らず憲吾の元に駆け寄った。
「三船さん、」
「っどうした諸星……」
「東郷宙さん、俺より圧倒的に強いから……気をつけて。」
「っ……わざわざ伝えるってことは、相当できる相手なんだな……」
「……まあね。
それじゃ、健闘を祈ってますよ……」
聡はそう言うと自分のベンチへ戻っていった。
その話を聞いていた吾郎は少し心配そうに憲吾を見た。
「っ憲吾……大丈夫か?」
「あぁ、あの諸星を倒したんだ。
相手が相当強いのは分かってるつもりだ……」
「……絶対、勝てよ。」
「当たり前だ。」