第17章 ☆Story34☆ 代替試合
「東郷さん……」
ゆりの目の前には組織の組頭である東郷の姿。
もう幻覚でも幻聴でもなくゆりの前に歩み寄ってきた。
ゆりは金縛りにあったかのようにその場から動けなかった。
「っ何で……貴方がここに……」
「言っただろ……オレは狙った獲物はのがさねぇってな……」_クイッ
「っ……いや!」
東郷はゆりの顎を持ち顔を近づけたが
ゆりはそれを払い除け後ろの壁際まで距離を取った。
「っ……やっぱり、
この大学の理事長やその弟さんと何か関係があるんですか?」
「さぁな……」
「っさぁなって……こんなの、偶然なわけ……」
「オレはお前と三船憲吾の様子を見にきただけだ。」
「っ憲吾に何かしたら、許しませんから……」
ゆりは恐怖心と闘いながらも東郷をキッと睨んだ。
「自分の身よりアイツを気遣うとはな……
まずは自分の身を守った方がいいんじゃねぇか?」_ドンッ!
「っ!」
両手で壁をドンッと叩きゆりを手中に収めた。
高身長から見下ろされゆりは肩を震わせた。
「はっ!すげぇ怯えてんじゃねぇかよ……一人で抜け出すなんざ、
とんだ怖いもの知らずだな。日本だからって安心でもしてたか?」
「っそんなこと……」
(っどうしよう……私また連れ去られちゃうの……?
でも、最初から私を連れ去るならとっくに……)
「……今日は本当に偵察に来ただけだ。だが……」
「っ何を企んでるんですか……」
「お前をオレのモノにするためには……
まず "アイツ" が邪魔だよな?」
「っやっぱり憲吾に何か危害を加えるつもりなの……」
「ふっ……お前がオレの条件を呑むかどうかで決める。」
「っそんな……」
(明らかに私に不利な条件出すつもりじゃん……)
「アイツの周りには常にオレの部下が張り付いてることになっている。」
「っ!?」
「つまり……
お前が条件を呑むか呑まないかでアイツの運命が決まるわけだ。
それに、アイツを消したところで
お前の心は揺らがねぇだろうからな……」
「っ……」
東郷の言葉に何も言い返せない
ゆりはその場に佇むしかできなかった。