第3章 ☆Story21☆ 動くそれぞれの歯車
「百合……?」
『事務所の人たちが、ゆりたちを推すのは結局……
大人たちのエゴだよね……名誉のため、お金のため……』
「っ百合……!
お前、なんか変だぞ……?」
『っ結局、人間は自分たちの欲のことしか考えてないんだよ……』
「っ……百合!!」
『っ!』
「百合、急にどうしたんだよ……お前らしくねぇよ……
お前は、そんなこと言うやつじゃない……
それにこの道を選んだのは……ゆりなんだぞ?
ゆりだけじゃない、
来海ちゃんだって、他の子たちだって、自分の意思で選んだことだろ?
っお前は……
それを見てきたんじゃねぇのかよ!!」
『っ……たい、すけ……』
「お前、お前がこの姿で初めて現れた日に言ったよな……?
俺たちのことをずっと見てくれてたって……」
『っ……』
「……お前、もしかして百合じゃないのか?
それとも、百合以外の誰かが、お前の中にいるのか……?」
『っよく、わからないよ……自分でも何言ってるのか……
でも私は私の霊タマシイが全部宿ってるわけじゃなくて、一部なの……
もしかしたら、別の私……だったりするのかな……
なんか、急に怖くなってきたよ……』
「……お前は確かにここにいる。
俺の知ってる、ゆりの知っている藤ヶ谷百合だ。
それは変わらない……もし本当に、別の誰かがいたとしても……」
『っ太輔……』
「そりゃあ、
芸能界って世界でまだ中学生とかの子供を利用して金儲けする奴らなんて
どこにでもいるし、中には最低な奴もいる……
でもそれ以外にも目的があってやっているんだろ?
美澤社長だって、
本当にゆり達を輝かせたいって思っているんだ。
人間って、そういうもんじゃねぇか?
どんな生き物よりも自我が強くて欲も強い……醜いかもしれない。
でも、それ以上に……何かを成し遂げるときの力は強い。
奇跡だって起こせる……俺は、そう思うんだ……。」
『……。』
「だから、今のゆりたちを可哀想とかって
百合でも思って欲しくない。ゆりは、
本気でこの世界で輝きたいって思ってる……
それは、お前にだってわかるだろ……?」