第3章 ☆Story21☆ 動くそれぞれの歯車
「っ……ごめん、太輔……
悪いところだけ見て言っちゃった……」
「いいんだ……お前だって、
ゆりが4年前に「アイドルになりたい」って言ったら……
お前はゆりの意思を尊重してただろ?」
『……うん、そうだね。
せっかく自分から何かをしたいって言ってきたのに……
それを簡単に否定することなんて、できないよ……。』
「……俺は、正直ゆりを芸能人にはしたくなかった……。
でも、お前が生きてたら絶対にゆりを応援するだろうなって……
たとえ俺が反対しても、
結局お前やゆりの押しに負けるだろうなって、思ったから……」
『太輔……』
「ま、ゆりが今幸せなら……
俺はそれでいいかなって……思えるようになったから……」
『……太輔、私が来た時よりちょっと変わったね。
……なんか、少しだけ寂しいな……』
「……?」
『またお別れする日が、近いかもね……』
「っ……!」
『でも、私や叶輔はそれが目的でこの世界に来たんだから……
当然と言えば当然なんだけどね……』
「っ百合……」
『……太sっ!!』
百合は太輔の名前を言う前に突然動きが止まった。
「っ……百合?」
『……。』
「っ百合!!」
ゆりは太輔の声に反応しない。
その代わり無気力に首や腕が垂れ下がった。
『……。』
「っ……まさか、ただのぬいぐるみに……」
太輔が思ったように
目の前にいる百合の目はただの作り物になっており
生命が宿っているようには見えないただのテディベアになっていた……。
「っ……百合……」
(まさか、
俺が百合と叶輔の会話を聞いてしまったのが原因なのか……?
それで、百合は無理やり神様に呼び戻されたとか……)
太輔はふと頭によぎり、
ベランダにぬいぐるみを抱き抱えたまま向かい空を見上げた。
「っ百合……」_ギュッ…
(俺のせいで、何もなければいいが……)
太輔はぬいぐるみを抱きしめたまま、
しばらく空を見続けるのだった……。