第3章 ☆Story21☆ 動くそれぞれの歯車
【っ父さん!?】
「っ……!?」
とうさん?
今父さんって……
確かに話し相手側は『父さん』って……
「っおい……
今なんか父さんって……『っ何でもないの!私の独り言なの!!』
独り言?んなわけねぇだろ……
生憎、俺は途中から盗み聞きしてしまった……
百合に言い訳する余地なんてねぇよ……
「っどう見ても独り言じゃねぇだろ、明らかに誰かと会話してただろ!」
『っ……』
百合は戸惑いを隠せないのと同時に、怯えているように見えた。
【ユウ……今なんかユウの大声聞こえたんだけど、気のせい?
なんか、『父さん』とかって、聞こえたような……】
「っ!?」
(ゆり?
まさか、今の声ゆりなのか……?)
男の子の声とはまた違う、女の子の声も聞こえてきた。
それは、娘のゆりと同じ声だった……
電話でよく話していた俺にはすぐわかった……
百合の話している先に、
知らない男の子とゆりがいることを……
『っ……!
ったい、すけ……』
「百合……お前……」
ゆりの声を聞いた後、その後の声は聞こえなかった。
おそらく、百合か向こうが切ったのだろうか……
『……。』
「……。」
百合は俺から背を向けるように体の向きを変えた。
「……。」_ヒョイッ
『っ!』
太輔はぬいぐるみ姿の百合を両手で持ち上げソファーに腰掛けた。
「……お前を責めることは何も言わない……
ただ、真実が知りたい……ゆりの身に、
何か危険が迫ってるのか……?」
『っ……』
「……悪いけど、途中から俺、聞いてたから……お前らの会話……」
『っ!?』
「だから、隠し事も言い訳も出来ねぇからな……?」
太輔は百合の頭を撫でながら呟いた。
『っ……』
「……お前、俺がこの場に鉢合わせちまったせいで
苦しめちゃったな……悪い……。でも、
聞いちまったからには理由が知りたい……
お前が話していた相手は、誰なんだ?
最後に聞こえてきた声は……ゆりだったのか……?」
『……太輔、』