第14章 ☆Story32☆ 逃げられない
「っ……」
膝枕をさせられるゆり、とりあえず襲われずにホッとした。
だが手をどこに置いていいかわからないゆり、それを察したのか
東郷はゆりの手を持ち自身の頭に乗せた。
「とりあえず、頭でも撫でてろ。」
「っ……東郷さんって、結構マザコンだったりするんですか?」
「ああ?
なんで急にそんな話になんだよ。」
ゆりの言葉に思わず睨む東郷。
「っす、すいませんつい……」
「ついでそんな言葉が出るかよ……なぜそう思う。」
「っ……なんと、なく……」
「は?」
「……私、赤ちゃんの時に母が死んじゃって……」
「それは知ってる。」
「母が、私を愛してくれてたことはわかってます。
けど……もっと直接ママの温もりに触れたかった。
ママにいっぱい、甘えたかった……こんなふうに膝枕してもらって、
優しく頭を撫でてもらいたかった……。」
「……。」
「……私、担任の先生にも言われたんです。
ママやパパがすぐ側に居なくて、ずっと寂しい思いをしてるって……」
「……それをオレと重ねたってことか……」
「っすみません……急に勝手なことを……」
「別に……」
東郷は「別に」とだけ言うとそのままゆりの太腿に身を委ねた。
ゆりは髪が乱れない程度に撫でてやった。
「……膝、疲れたら言えよ。」
「……お気遣いありがとうございます。」
とりあえず足が痺れない限りは続けることにした。
東郷は仮眠を取るのかそのまま目を閉じた。
「……寝ちゃった?」
(さすがに何時間もはちょっとキツいかも……)
ゆりはふと東郷の顔を覗き込んでみた。
見れば見るほど端正な顔立ちをしていた。
「……。」
(顔はカッコいいんだよなこの人……
やることは最低だけど……)
東郷はすぐ視線に気づいたのか目を開けた。
「おい、」
「っ!?」
「何人の顔ジロジロ見てんだ。」
「っすみません……」
「オレに見惚れてたか?」
「っそう言うわけじゃ……
顔だけは整ってるなって思っただけです。」
「だけはって何だよ……」
_ボソッ「どの口が、」
(人のこと散々犯しておいて何よ、このロリコン……)←
「あ?」
「っ何でもないです!」
聞こえないつもりで言ったがどうやら聞こえていたようだ。