第14章 ☆Story32☆ 逃げられない
ゆりが目を覚ましたのは1時間後、
部屋の時計を見てみれば既に20:00を回っていた。
「っ!」
(私……あれから寝ちゃったんだ……)
ふと辺りを見渡せば東郷の姿は見えなかった。
その代わりにテーブルには既に冷めてしまった夕食が置かれていた。
「っ……私のご飯なのかな……」
ゆりが食べていいのか迷っていると部屋の扉が開かれた。
その先には東郷の姿がありゆりを見た。
「っ!」
「やっと起きたか……それ、
お前の飯だから腹減ってるなら食っていいぞ。」
「っはい……ありがとう、ございます……」
「……スープは冷めてんな。
新しいのを持って来させるから少し待ってろ。」
「っいえ…!
大丈夫です……勿体無いですし冷めてても大丈夫です……」
「そうか……ならさっさと食べろ。」
「はい……」
ゆりは食事を取ることにした。
その間東郷は書斎に座り何やら分厚い本を読んでいた。
少し気になったが特に気に留めることなく夕食を食べ進めた。
「……ごちそうさまでした。」
20分ほどで夕食を食べ終えたゆりは軽く手を合わせた。
それに気づいた東郷はこちらにやってきた。
「全部食ったようだな。
……オレはこの後、23時を回ったら出かける。
帰りは明日のいつになるかはわからねぇ。」
「っ……どこに行くんですか?」
「おめぇはまだ知らなくていい……とにかく、
オレが戻るまでこの部屋か隣の部屋から出るな。
用事があれば部下を呼べ。」
「っ……はい……」
「……それまでは暇だろ。
とりあえず此処にある本は読んで構わねぇから。」
「はい……」
そう言うと東郷はベッドに腰掛けた。
ゆりはまた抱かれるのかと体をびくりとさせた。
「今日はもうしねぇって言ったろ、身構えんなよ。」
「っ……」
「……お前もこっちに来い。」
「ぇ……」
「だから、今日はもうヤラねぇって言ってんだろ。
……ベッドに座るだけでいい。」
「っ……」
ゆりは不審に思いながらも東郷の隣に座った。
緊張してると東郷はゆりの太腿に頭を乗せた。
いわゆる膝枕というものだ。
「っ!?」
「しばらくこうさせろ。……それならいいだろ……」
「っ……」