第14章 ☆Story32☆ 逃げられない
そして東郷のベッドに戻ったゆり、
ゆりは体の意志のままその場にばたりと倒れた。
「っ……」_ばふっ
(っ身体が限界に来てる……これ以上は無理だよ……)
「身を持って知っただろ。
オレの前であの男の名前を呼ぶことが何を意味するか……」
「っ……」
「……今日はこの辺にしてやる。しばらく休め。」
「っ……」
(やっと休める……)
浴室で1時間以上犯されていたゆりは
とりあえずほっと息を撫でおろす。
その時東郷のスマホに着信が入ってきた。
「ッチ……こんな時に……しばらく抜ける。
飯は後で持ってきてやるから寝とけ。」
東郷はそう言うと素早く衣服に着替え部屋を出ながら電話に出ていった。
やひとり取り残されたゆりはベッドに身を委ね目を閉じた。
「っ……憲吾……会いたいよ……」
(嫌われてもいい……もう一度憲吾の元に抱き着きたい、
大好きって言いたいよ……)
ゆりはシーツを握り締めながら憲吾を想い静かに泣き続けた。
泣き続けるうちに意識を手放したゆりは
東郷が戻ってきてからも眠りについていた。
_ガチャッ「おい、飯持って来てやったぞ……って、寝てんのかよ。」
「……。」
夕食を乗せたお盆をテーブルに置きゆりの顔を覗いてみれば
涙の乾いた跡が顔についていた。
「またアイツを想って、泣いていたのか……ッチ……
餓鬼のくせに、相変わらず生意気な娘だ……ま、」
(そんな餓鬼に本気になるオレもどうにかしてる、か……)
東郷の親指で涙の跡を拭ってやるとゆりを
布団の中に入れてやった。スヤスヤと眠っているゆりを
しばらく見ると東郷は再び部屋を後にした。
「またしばらく此処を離れる事になるか……さて、
どうしたものか……」
(まだ日本の察や他の連中の動きもないが油断はできないな……
別のアジトにはCIAが潜り込んでいたからな……)
ちなみに東郷が今日抜けたのはそのアジトの様子を見に行った為。
ここも既にCIAや公安が嗅ぎつけてる可能性があった。
「アイツを、ずっと此処に居させるわけにもいかねぇな……」
(その前にやる仕事も多い、
まずはそこを片付けねぇことに始まらねぇな……)