第14章 ☆Story32☆ 逃げられない
「お嬢さん、何の御用事で?」
「っ……」
入ってきた若い男は日本人のようだった。
ゆりは少し緊張しながらも
男にシャワーを浴びたいと言うことを伝えた。
「っあの……私シャワーを浴びたいんです、
しばらくお風呂にも入ってなくて……」
「あー……連れ攫われてから入ってねえの?
そりゃ年頃の女子にはきちいわな。」
「っえっと、あの……」
「ちょっと待ってな、一応東郷さんに許可取ってくっから。」
「っあ……」
若い男は先程東郷が入って行った部屋に向かいノックをした。
すると扉越しから東郷の声が聞こえてきた。
_コンコン
「……誰だ?」
「オレっす!ジュリっすよ。」
「何の用事だ?」
「ゆりちゃんっすけどシャワー浴びたいみたいですよ?
だってあれからずっとお風呂にも入ってないんでしょ?」
「好きに行かせろ。ただし、ドアの前には見張りをつけとけ。
……お前でも構わないがな。」
「へーい……シャワー程度で随分慎重っすね?」
「……またいつ逃げ出そうとするか分からないからな。」
「了解っす!」
どうやら若い男はジュリという名前らしい。
樹が東郷から許可を取るとゆりの元に戻ってきた。
「シャワー行って来ていいってさっ
んじゃここからそんな離れてないからオレについて来て、」
「っは、はい…_グイッ…っちょ!?」
ゆりがベッドから降りると
右手で左手首を掴まれ軽く引っ張られた。
「まあ念の為?逃げないようにするための。」
「っ……今逃げ出そうとするほど、
私も馬鹿じゃありませんから……」
「そだねー、ゆりちゃんは賢いね〜」
「っ……」
(外部からの助け、今はこの可能性に賭けるしかない。
もう少しチャンスを窺わなきゃ……)
そんなことを考えているとあっという間に
お風呂も完備されているシャワー室に着いた。
「んじゃ、オレはここで待ってるから後は好きなだけ入りな?
バスタオルとかも揃ってるから好きに使って。」
「っありがとうございます……えっと……」
「オレはジュリ、」
「ジュリさん、ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げながらお礼を言うゆりはシャワー室に入る。
ジュリはシャワー室に入っていったゆりを見送りスマホをいじり始めた。