第14章 ☆Story32☆ 逃げられない
「っ……おいし、」
一日振りのちゃんとした食事はとても美味しかった。
ゆりは夢中でごはんを食べ進め東郷はその様子をずっと見ていた。
それから10分ほどで食べ終わり再び手を合わせた。
「ごちそうさまでした。
とても、美味しかったです……」
「そっ」
東郷はそっけなく言うとお盆を取り上げそれをテーブルに置いた。
そしてベッド脇にある椅子に再び腰掛けた。
「っすいません、ありがとうございます……」
ゆりはお礼を言うが特に東郷は何も言わなかった。
あまりにもそっけなさ過ぎるのでゆりは
どうしたらいいか分からず顔を俯かせた。
「……おい、」
「っひゃい!?」
「はっ!
面白い反応をするなお前は、」
だが突然声をかけられ思わず変な声が出るゆり、
東郷はそれに少し吹き出した。
「っ……」
(っ一体この人は何が目的なの……全然見えない……)
ますます東郷がわからなくゆり、だが昨日の出雲といるよりは
大分マシだと思った。もし目の前に居るのが出雲だったら
また昨日のように犯されてしまうと思ったからだ……。
「ますます気に入った……お前だけは、返すわけにはいかねぇな、」
「っ!?」
(っ返すって、どういうこと……)
「まぁ何せ、お前らDolce全員を拉致ってるわけだからな。
公安はもちろんCIAの連中も探りを入れてる話が絶えねぇ……」
「っ!」
(っそれなら、外部からの助けが来るのも時間の問題かも……けど、
私だけ返さないって……)
再び恐怖心が現れるゆり、東郷の言い分を聞く限り、
自分だけは逃すわけにはいかないと言うことだ。
たとえ外部からの助けが来ても
自分だけ助からないのではという不安に駆られた。
ゆりが少し東郷から距離を取った時、東郷は椅子から立ち上がり
ベッドのほうへ移動してきた。そしてゆりの側に座ったと思えば
右手で顎をクイッと上げ顔を近づけた。
「っ!?」
東郷からはほんのりと香水の香りが漂っており
近づいたサングラスの先に彼の瞳を捉えた。
彼も端正な顔立ちをしているようでゆりは思わず息を呑んだ。
「オレは手に入れたいと思ったモノは絶対に手に入れる。
お前も……時期オレのモノにしてやる。」
「っ……いや!」