第13章 ☆Story31☆ ホンモノのアイドル、ニセモノのアイドル
「っ……彼女は僕のモノだ……!
たとえボスの命令でも嫌だ……!!」
「子供じゃあるまいし、駄々をこねないで下さい。
……では、しばらくの間彼女を貸していただけませんか?
ボスも彼女だけに構えるほど暇じゃありませんし
顔を合わせをするだけですよ。」
「っ……何もしないか?」
「俺に聞かれても、それはボス次第だ。
……なんだ、組織に逆らうのか?ここで殺してやってもいいんだぞ?
本物が死んでも、お前の偽物はいくらでも作れるんだからな……。」
蔑む表情で出雲を見下ろす伊集院、さすがに背筋が凍ったのか出雲は
渋々ゆりを伊集院に引き渡すことにした。伊集院は
裸体のゆりに病衣を着せお姫様抱っこで持ち上げ部屋を後にした。
出雲はまだどこか不満げだったが伊集院の背中を見送った……。
「……まさかあそこまで気が狂っているとは、恐れ入った。
まあいい、アイツには "偽物" でも渡せばいいだけのこと……。
貴様のモノだけになるなど、実に腹立たしい男だな……。」
伊集院は独り言のように呟くと
"あの方" と呼ぶ人物が待つ部屋に向かった。
_コンコン
「東郷様、藤ヶ谷ゆりをお連れしました。」
「入れ。」
伊集院が部屋の扉をノックするとすぐ返答が返ってきた。
部屋に入るとこの組織のボスだという "東郷" がラウンジチェアーに座り
伊集院と意識をなくしているゆりを迎えた。
東郷はまだ20代半ばだろうか、
サングラスを掛けているが容姿端麗であることは伝わる。
「東郷様、彼女が藤ヶ谷ゆりです。
先程まで底辺の男に犯され気を失っている状態です。」
「あぁ、オレもその様子は監視カメラの映像で観てた。
……すっかりやつれているな。」
東郷はチェアーから立ち上がるとゆりの顔を覗いた。
「初めての性行為であそこまでされれば無理もないでしょう。
……この娘はどうされますか?」
「とりあえず、ベッドで寝かせてやれ。
さすがのオレも年端のいかない女相手に手を出すつもりはない。」
「流石は東郷様でございますね。
では、彼女はこちらに置かせて頂きます。」
伊集院はベッドにゆりを寝かせ掛け布団を掛けてやった。
ゆりは行為の疲れですっかり深い眠りについていた。