第13章 ☆Story31☆ ホンモノのアイドル、ニセモノのアイドル
電話を切った憲吾はしばらく考え込んだが
今の自分には何もできないと思い自主練に集中する事にした。
そして以前に瑛二が言っていた棄権した分の代替試合をするという件、
先日瑛二は直々に海王高校に足を運びその事を顧問である神部に
憲吾と吾郎の代替試合を提供するという会談を持ち込んできたのだ。
この代替試合に勝てれば大学の推薦もすぐ決まるとのことだった。
神部はこの会談をすぐ承諾し試合はゆりたちが
北京から帰国した後にすることが決まっている。
「試合に勝つことだけを考えるか……今は、
ゆりを信じるしか……っ……」
(っゆりを信じる……?)
俺はゆりを信じる資格があるのだろうか……
もしかしたら、
あのゆりは本当のゆりだった可能性も……
「っんなこと……あってたまるかよ……」
(なら……)
なら今まで見てきたゆりは何だったんだ?
俺を好きだって言ってくれたことも……周りにバレるかもしれないのに
必死に応援してくれてたことも、全部嘘だって事になるのか……?
「っゆり……!」
俺の知っているゆりは、どこにいるんだよ……。
もし、ゆりが今どこかで危険な目に遭ってるんだとしたら……
俺には、何も出来ないのか……?ただ待つことしか……
憲吾がよく自主練でも使っている公園、
そこのベンチに座って俯いていると前方からある人物が
憲吾の元にやって来た……。
「三船くん……」
その声は落ち着いた男性の声、
どこかで聞いたことあるような気がする声だった……。
「っ……?」
(この人……前にどこかで……?
いや、初めて会う人だ……)
「突然お声を返して申し訳ありません。
私、警視総監を務めてる櫻井翔と申します。」
「っ!?」
(警視総監、櫻井翔……っ確か、吾郎が言ってたか……?)
「おや、その様子は私をご存知で?
確かに私は貴方と何度かお会いしておりますが
それは貴方が意識をなくしていた時ですからね……」
「っなぜ貴方のような人が俺に……」
(やっぱり、ゆりの身に何かが起きているのか……?)