第13章 ☆Story31☆ ホンモノのアイドル、ニセモノのアイドル
「お前……本当にゆりなのか?」
こんな事を本人の前で言うなんてどうかしてる……でも、
『っ私は藤ヶ谷ゆりだよ!?
人気アイドルグループのエースで……!!
どうしてそんなこと急に……』
「今のゆりは、俺の知ってるゆりじゃない。」
お前は俺の知ってるゆりじゃない。
こんなゆりを、俺は知らない……。
しかも自分から人気アイドルグループのエースとかだなんても言わない。
むしろゆりはそういった事には謙虚だったはずだ。
そんなゆりが、急に変わるわけはない……。
『っ何を根拠に……一体貴方は誰なの!?
何で私をそんな知ったかふうに言うの!』
それに、俺のことも忘れているかのような言い振り……
「……悪いが、今のゆりと話す権利は俺にはない。
もしお前が俺の知っているゆりなら……
俺の質問には全部答えられるはずだ。」
そう、さっきの質問だって本人ならすぐ返せるような内容だ。
写真だってありきたりなものでなくアイツと写真が被っていた。
それを話題にするくらいゆりには印象付いてたはず……
それなのに……
『っ何それ……まるで、恋人みたいな!!
彼氏なんて、今の私には必要ないの!!』
俺は"必要ない" か……一応彼氏である身としては
ショックじゃないと言えば嘘になる……けどこのゆりは、
「……そうか。
なら、もうこれ以上俺と話している必要はないな。
……俺からは、もう連絡しないから。」_プチッ
俺の知っているゆりでない。今のゆりを、
理解することは俺にはできない。
だからもう連絡する必要はないだろう……もし、
もしこれが俺の知っているゆりなら、何かしら連絡をしてくるはずだ。
でも今のゆりにそんな気配は微塵も感じない。
だから電話を切った……。
「っ一体アイツの周りでは何が……」
ゆりがあそこまで変わってしまうというのは
この短期間では考えにくい……なら他に考えられる可能性は
二重人格か記憶喪失あたりだろうか。でも二重人格だったなら
気づくはずだし記憶喪失ならライブも即中止になる……
「っゆり……」
(やはり、あの夢は何かがあったという意味だったのか?)