第13章 ☆Story31☆ ホンモノのアイドル、ニセモノのアイドル
『っ何それ……まるで、恋人みたいな!!
彼氏なんて、今の私には必要ないの!!』
「っ……!」
(まさか、ゆりがこんな事……
喧嘩してたくらいでこんなこと言わない……三船の言う通り、
まさかこのゆりは……ボンの言うとおりニセモノ……?)
そして電話は憲吾の方から切られる形となり
ゆりはスマホを乱雑に放り投げた。
「っこんなの……」
剛太が呆然と立ち尽くしながらゆりの様子を見たが、
やはり剛太の知るゆりの姿はなかった……。
『あーあ……早くライブやりたいなぁ……
ライブでみーんなを虜にするんだぁ♪だって私は……
みんなのアイドルなんだから!』
『みんな、私"だけ" 見てればいいよ!!はははっ♪』
『っははは♪やっぱり踊るっていいなぁ……
みんな、どれだけ私を愛してくれるかな〜♪』
剛太の目に映るゆり、
それはまるで愛に飢えたように狂った姿だった……。
「っこんなの、ゆりじゃない……俺の知るゆりは、
もっと芯の強い子だ。みんなのことを誰よりも考えてて……
歌うこと、踊ること、そして目の前にいる人たちを笑顔にすることに
素直に向き合って、全力で努力を惜しまない。」
(これが俺の知るゆりだ……)
いくら親への愛に飢えてるとはいえ、
ゆり自身はそれを自分の力で乗り越えている。でなきゃ、
ソウルのライブの時だってあんなには輝けなかった……。
「っ……このゆりが本当に偽物のアンドロイドなら、
他のみんなも……」
(まずは千鶴と愛美だな……この2人も俺のクラスだ。
違和感があればすぐに気づく……もしこの2人も偽物ならきっと
来海たち3人も……)
剛太はゆり以外のメンバーも観察、
そして違和感に思ったことをメモに残していった。
「っクソ……なら本物のゆりたちはどこに行ったんだよ……!」
(千鶴と愛美も黒だ……他の3人も黒の可能性が高い……)
そんな中、大我が捜査から帰ってきた。
そして剛太は大我にメモを渡しながらゆりたちの様子が
明らかにおかしかった事を伝えた。
「っ確かに、おかしな点が多いね……ありがとう、見ててくれて。
俺も映像を確認してみるよ。」
「っあぁ、頼む……」