第12章 ☆Story30☆ 北京は波瀾万丈!?
_ドドドドドドっ!
城壁が崩れ始めるのと同時に辺りが一瞬にして暗くなった。
憲吾はゆりの手を取ったままひたすらに走った。だが地響きは
一向に終わる気配はなくどんどん2人の後ろに追いついてくる。
『っ憲吾……!』
『っゆり!
絶対に俺の手を離すなよ!!』
『っうん……!』
だが城壁の崩れはいよいよ2人に追いつき
憲吾とゆりを引き離すように2人の真ん中で道にヒビが入った。
『『っ!?』』
そしてあっという間に城壁と共に崩れていき……
_ガガガガッ!!
『っきゃああ!!』
『っゆり!!!』
『っ憲吾ーー!!』
2人の手は呆気なく離れてしまいゆりは必死に手を伸ばすも虚しく
城壁と一緒に暗闇の底へ落ちていった……。
『っゆりーーーーー!!!』
憲吾が伸ばす手はゆりに届くことはなく
そのまま姿は見えなくなっていった。
_ガバッ!「っゆり!!!……っ!」
憲吾の夢はここで途絶え、
全身汗でいっぱいにしながら勢いよく起き上がった。
「っ夢、か……嫌な夢だ……」
まさに幸せから一転、絶望に変わるだなんて……
だが憲吾は嫌な予感を感じた。
「っゆり……大丈夫だろうか……」
あれからゆりとはLINEでのやりとりがほとんどだった。
ライブの準備や他の仕事で忙しいだろうと思い電話でのやりとりは
控えていたのだ。だが今すぐにでも電話をしてゆりが今無事で
大丈夫であることを確認したかった。
しかし時刻はすでに24:00を回っており日付が変わっていた。
「っ一体何なんだ……この得体の知れない不安と胸騒ぎ……夢のせい?
っ……本当に最悪な夢だ……水でも飲むか……」
憲吾は水を飲む為一旦ベッドから降りキッチンのシンクまで歩く。
水を一杯飲み汗もフェイスタオルで拭いた。
「っゆり……何事もなく、
日本に戻って来てくれるといいが……」
コップをシンクに入れ窓から外を見ながら独り言を呟く憲吾。
憲吾は部活が終わったらゆりに電話してみようと心に決めた。
それがゆりにとって迷惑だったとしても、
ゆりの声を直接聞いて安心したいのだ……。