第3章 ☆Story21☆ 動くそれぞれの歯車
空太の母親は、過去にスターズTVに唯一の女性プロデューサーとして
数多くの番組を仕切ってきた実力者だ。
収入もよく父の愛人でもあったから女手一つで育てるのも苦ではない。
けどある日、
俺の母に空太の母親と空太の存在が知られ
それ以来母は体調を崩すことが多くなった。
それで父は、空太達の存在を抹消すべくありもしない噂を局内に流し
辞めざるおえない状況に追い込んだ。
そして母は結局癌になり10年前にこの世を去った。
これらのことを全て知った空太は、当然俺たちを恨むだろう……
俺は直接関わっていないとはいえ、罪悪感は幼い頃からあった……
自分の父親は、なぜそんなことをしたのだろうかと……
そこにつけ込まれ、俺は今に至り空太の指示に従っている。
ゆりさんに直接的な危害を加えない条件で……
「9月9日……この日は三船憲吾さんの試合日だ。
この日に、実行するらしい……」
「9月9日……ゆりさんが出国する前日ですね……」
「……あぁ、そうだな……
多分、ゆりさんは彼の試合に応援には行くだろうね。」
「……その前に?」
_コクッ「そうなるな……」
海斗は眉間にシワを寄せながら窓の景色に目を向けた。
「坊ちゃん……」
健人はそんな海斗に複雑な感情を抱いたまま
そっと海斗の部屋を出て行った。
「……空太たちは、一体2人に何を……」
海斗は空太からそこまでは聞かされておらず、
ゆりを空港近くの使われなくなった格納庫に
連れ出すようにとしか言われていなかった。
そしてシャワーなどをも終え、
ルームウェアに着替えていた海斗はベッドに寝転がり……
「……ごめんね、ゆりさん……」
海斗は小さくそう呟くとそのまま目を閉じ眠りにつくのだった……。