第3章 ☆Story21☆ 動くそれぞれの歯車
海斗side
ゆりと憲吾が会話をしている頃、
海斗は自室で金狼こと空太とスマホ越しで会話をしていた。
「……出国前に……?」
【あぁ……お前は、アイツをそこに連れ出せばいい。
あとは俺らがする……】
「……。」
【……返事は?】
空太の問いかけに黙る海斗、
空太はそれに見かねたのか怪訝そうに呟いた。
「っ……」
【……お前、
藤ヶ谷ゆりのことがs「っそれ以上言うな……!」……なら、
お前は俺に“罪”を償え……。
お前は前に言ったな……罪を償いたいって……】
「っ……わかった。
けど、彼女に危害は加えないでほしい……
それだけは、約束してくれ……」
【前にも言ったが、それは俺のボス次第だ……】
「っ……」
【……頼んだぞ。】
そう言うと空太はそのまま電話を切った。
「っ……」
罪を償う……
俺と空太は母親違いの兄弟だ……。
空太はいわゆる愛人の子供だ。
今はその母親と安いアパートで2人と質素な暮らしているらしい……。
一方の俺は、昔から何不自由なく裕福な暮らしをしてきた。
同じ父親を持つとはいえ、正反対な俺たち。
これだけでも十分俺を恨む動機にはなるが、
彼はそれ以上に俺たち財前寺家を恨む理由がある。
「……坊ちゃん、本当に良いのですか?
手を打つなら、今のうちですよ?」
同じ部屋にいた健人は複雑な表情を浮かべながら海斗に呟いた。
「……俺は、俺たち家族は空太やその母親に酷い仕打ちをした……」
「空太様の母親の職を失わせ、
今の質素な生活に追い込んだことですか?」
「あぁ……父が空太と母親の存在を失くすかのように、
務めていたテレビ局から強制解雇……
凄腕の女プロデューサーと言われていた彼女を……」