第11章 ☆Story29☆ 夢に向かって
「「っ!!」」
2人は警戒しながらも銃を向けたままゆっくりと近づいていて行く。
「アッハッハッハ!!!」
「長い逃亡を繰り返し、正気を失ったか出雲……まあいい、
お前は即刻日本に搬送される。その時にたっぷりと話を聞いてやる。
葛城、手錠を出雲に。」
「はい。出雲暁彦、強制性行等罪及び殺人罪で逮捕する。」
賢司は銃口を出雲に突きつけて抵抗の余地をさせない。
だが出雲は抵抗する様子は見られなかった。
圭吾はその様子を怪訝そうに見ながら出雲の両手に手錠をかけた。
そして出雲は連行される間も抵抗を見せず一旦現地の警察に引き渡された。
「なんとも、あっさりとした逮捕劇だったな……」
「今までの苦労が嘘のようですね……でも、これでまずは一安心ですね。
山田さんにすぐ報告したいくらいですよ……勇吾も、ありがとね。」
「別に、俺は見張ってただけだ。
捕まえたのはお前だろ。」
「いや、俺も居たからな?
……ま、犯人を逃さないよう見張ってくれてたことは感謝する。」
「ふんっ……てか、お前らは違和感ねぇの?」
「違和感?」
勇吾の発言に眉を顰める賢司。
「あぁ。あんなに手こずってた犯人がこうあっさり捕まることに……」
「俺も引っかかる部分はあるが……アイツは出雲暁彦で間違いない。
犯罪を犯せば人格が狂うことだってある……なんだ?
お前はアイツが出雲ではない別人ではないかってか?」
「そこまでは知らね。
けど、これであっさり終わるか?アイツ、結構でかい組織の人間なんだろ。
根本的にソイツらぶっ潰さねぇと解決しねぇんじゃねぇの。」
「それも一理あるが、それはこの国の警察の仕事だ。
俺らはあくまで日本国内で起きた事件のみ……
まあ日本にその組織と繋がる何かがあれば話は別だがな……
それは、日本に帰ってからの警視庁の仕事だ。
俺らの任務は出雲を日本に搬送すること、だったからな……」
「勇吾の言う通り、心残りはあるよ……
でも実行犯を捕まえられただけでも被害者の家族は少しでも救われる。
ゆりちゃんをはじめとするドルチェの子達や
その関係者の人もみんな、安心して救われる……。」
「……。」
勇吾はまだ違和感が残ったままだが
ここは刑事2人の言うことを聞くことにした。
そして圭吾はホテルに戻った後早速涼介に連絡を入れるのだった。