第11章 ☆Story29☆ 夢に向かって
『太輔……』
「……なんだ?」
『今は、言いたくない……でも心の整理がついたら話すから……』
「わかった……なら、今日は俺が夕飯作るからソファーで休んでろ。」
『でも……』
「いいから……またボケっとして、火事でも起こされたら
たまったもんじゃないからな。
何作ろうとしてたんだ?匂いからして……ビーフシチューか?」
『うん……サラダは昨日作ったのでいいかなって冷蔵庫、』
「わかった。あとは俺がやるからゆっくり休め。」
太輔は百合を抱き上げるとソファーに座らせた。
『ありがとう太輔……ねえ太輔、』
「ん?」
『子供って、思ってること全部親には話さないじゃん。
私たちだってそんな頃あったよね……』
「あぁ、そうだな……交友関係とか、
聞かれんの好きじゃない時代もあったな……それが、どうかしたのか?」
『……もし、もしもね?
自分に子供の心を全部読み取れる能力があるとするじゃん。
子供の気持ち、全部知ったその時……太輔はどうする?』
「ぇ……なんだよ、それ……
お前、ゆりの何かを知ったのか……?
アイツの身に、また何か……」
『……。』
「っおい百合……!!」
『どうするの?』
「は……?」
『私の質問の答え……太輔なら、どうするの?』
「っいきなり言われたって、そんな……普通、
そんなことはありえねぇし……悪りぃ、すぐには答えられなさそうだ……。
飯作りながら考えてもいいか?」
『うん。私もそうするから……ご飯の時か食べ終わった時に話そ?』
「わかった……とりあえず、俺は準備をするよ。」
『うん、お願いね。』
太輔はビーフシチュー作りを再開し、
先程の百合の質問の答えを考えていた。
「……。」
(もしゆりの気持ちが全部わかってその中に、ゆりが
知られたくない気持ちがあった時どうするかって意味だよな……
そのことを、ゆりに言うかどうかってことか?でもそれって……)
でもそれって、事の内容によると思う……。
極端な話、実は家族のここが嫌いみたいなことはわざわざ言う必要も
指摘もいらないと思う。お互い嫌な思いをするだけかもしれない……。
けど悩み事ならどうだ?友達と大喧嘩した、学校でいじめられたとなったら話は別だ……。