第11章 ☆Story29☆ 夢に向かって
百合side
太輔が仕事に行っている間、自宅には私一人。
この姿で料理するのもすっかり慣れて太輔の帰りを待ちながら
夕飯の準備をしていた。そんな時、
ユウからのテレパシーでゆり達の様子が頭の中に入ってきた。
その内容はとても深刻な問題で、恐ろしい殺人犯がゆり達が今いる
ソウルを逃走中だってこととその犯人が危ない組織に関わっていること。
そして何より、組織には韓国のアイドルを殺した経歴があり肝心の犯人も
ゆり達と同じくらいの女の子を殺している点から
今事務所では危険視されてるみたい。
ユウがビジョンを送ってきたのは、恐らく今までにないくらいの事件に
発展する可能性があるからだと思う……その現状を、
私たち両親に知らせるつもりだと言う事が伝わってきた……。
でもゆりたちは、私たち親にそんなことを言うつもりはないらしい……。
『っゆりたち……プロ意識高いどころか
もっと親を頼ってもいいじゃん……』
ゆりたちは本当にプロ意識が高い、
もちろんゆりの声のトーンからしてもそれが感じられる。
本当に当時の私や太輔……ううん、今の私たち以上に意識が高い……。
成長してて、嬉しいはずなのになんか悲しい……。
『ゆり……』
(このこと、太輔に言うべき……?
でもゆりは、太輔に言うつもりはないらしいし……)
_ガチャッ「ただいま。」
『……。』
「……百合?
居ないのか?」
太輔が仕事から帰ってきたが百合はそれに気づかなかった。
かき回してた鍋からは泡が蓋から飛び出して溢れていた……。
そして太輔はリビングにやってきたが……
「百合の奴……寝てんのか…っ百合!!」_ダッ!
_ハッ『っ!』
キッチンで固まっている百合にすぐ気づき太輔は
急いでキッチンに向かいIHコンロの電源を切った。
「っ……おい百合!大丈夫か!?
お前まさかまた……」
『っ太、輔……』
百合はゆっくりと太輔に体を向けた。
太輔はほっと胸を撫で下ろし百合の頭を撫でた。
「っよかった、無事で……何かあったのか?」
『……。』
「……また、俺には言えないことか?」
『太輔……』