第11章 ☆Story29☆ 夢に向かって
「うぅ……犯人早く捕まればいいのに!!」
来夢はばたりとテーブルに俯く。
「アタシたちは、ほんと普段の日常に気を使うしかないよね……
このこと、パパ達にも言ったほうがいいのかな?」
「……パパ達には、言わないでおこうよ。
少なくとも、北京に来るまでは……余計な心配、かけたくないもん……」
『っ……』
(ゆりちゃん……)
「っだよねぇ……でも、それ判断するのは涼介さん達や事務所でしょ?
私たちが言わなくても、事務所から話が行く可能性だって……」
来海はふとモニターに映っている瑛二のほうを見た。
瑛二は何やら涼介と話している。
「社長、この件はメンバーのご家族には伝えますか?
現状まだ犯人がこちらに手を向けるかはまだ分かりませんし……」
『そうだな……警視庁も、新たな情報が分かり次第連絡をくれるようだ。
現時点で、ドルチェに危害が加わる可能性は低い。
もうしばらく様子を見よう。これが我々以外にも知れ渡ったら
世間を混乱させてしまうかもしれないからな……』
「ですね……でもメンバーは不安な気持ちのまま……
ゆりちゃん達に、任せましょうか?家族に伝えるかどうかは……」
『そうだな。皆それぞれ心の在り方などは違うからな。
親御さんに言って安心するならそれがいい。
ゆり達に任せなさい。』
「はい、そうします……」
「……だってさ、どうするみんなは?
アタシは言わない!あのパパのことだからますます心配するだろうし……」
「……来夢はどうしたい?
私はどちらでも大丈夫よ。」
「来夢も、いい!
だって言っちゃったら安心して北京に来れないでしょ?
お父さん達にはギリギリまで言いたくない。」
「……そうね、わかった。
私たちは、現時点では言わないわ。
事が深刻になったら、言うしかないとは思うけど……」
「私も、かな……私のところも来海ちゃんと同じで
今より余計に心配かけちゃうだろうし……千鶴ちゃんは?」
「私も言うつもりはないわ、現状。
芸能人にそういう危険なことは付き物だって、
両親もわかってるはずだから……ゆりも言うまでもなく……」
「うん、言わない。
パパには出国前にも心配かけちゃったし……
これ以上心配かけたくないよ……」
『……。』
(みんな、僕が思ってる以上に大人なんだな……)