第10章 ☆Story28☆ 世界を目指して…
『太輔……』
「まぁ、ゆりの前で話すことはできないだろうけどさ……
ゆりと一緒にいれる時間は、もうそれくらいしかないだろ?
ぬいぐるみの姿とはいえ……百合も叶輔も、俺らの家族だ。
家族が一緒にいるのは、当たり前だろ?」
『ふふ……そうだね。
あ、そうだ!できたら家族写真撮ってよ!
周りから見たらぬいぐるみ抱っこしてる父と娘の写真だけどさ笑』
「……別に、構わねぇぞ。
家族写真……」
太輔はスマホを手に取り待ち受け画面を百合に見せた。
『結婚式の時撮ったやつだね!
ゆりなんてまだ赤ちゃんだし
このカメラ目線慣れてない感じがまた可愛いな〜♪』
「俺たちの家族写真ってこれだけだったからな……
本来だったら、ここに叶輔も居たかもしれないんだな……」
『……うん。
だから、今この時が本当に奇跡だよね?死んだ私が太輔と一緒に居れて……
生まれてこなかった叶輔がゆりと居れて……本当に凄いことだよ。』
「そうだな……せっかくだし、写真もいっぱい撮るか……
ゆりが小さいきり、写真なんて撮ってこなかったし……」
『そうしてくれると嬉しい♪
お母さんやお兄ちゃん達と一緒に写った写真も撮ってくれる?』
「あぁ、そうだな。……ぁ……」
(そういえば……)
『太輔?急にどうしたの?』
「いや……ふと思ったんだ。
なんでお前が、レンっていうぬいぐるみに宿ったのか……
正直、ぬいぐるみってだけならゆりが小さい時に持っていたやつだって
俺のうちに残ってる……それなのに、
わざわざお前の実家にあるぬいぐるみに宿って、
裕太くんから直接渡されるだなんて……」
『……。』
「確かに、俺がお前の実家に行ったきっかけは
ゆりが持っていた叶輔が原因だけど……
まるで、仕組まれていたみたいな……」
『まぁ、神様はなんでもできちゃうって、ことかな……
それに……私や叶輔がレンとユウに宿ったのは……
レンとユウにも少なからず意思があったから……』
「ぇ……?」