第23章 ☆憲吾ルート☆ Happy END後編
「っ……」
「っほら、ゆりちゃんって演技力もすげぇじゃん?
やっぱり最初の自己紹介ソングのあれで
ゆりちゃん思うことあったんじゃねぇかな?
ファンに少しでも安心感を与えるために……けど、逆にそれは
お前を傷つけてしまうことになってしまった……正直、
ゆりちゃんの言い方はある程度事情知ってる身からしたら
訳わかんねぇことかもしれない。けど、
それ以外のファンには本人が直接口にしたことでゆりちゃんへの
信頼度はいくらか上がッてるんじゃないかって思う……」
「……。」
(ゆりはファンを誰より大切に思ってる……
それは付き合う前からもわかってた……けど……)
頭ではわかっているつもりでも本音としてはやはり辛いものだった。
今までの自分を否定されたような気がして……。
「憲吾……お前は世界一の選手になるために頑張ってるだろ?
逆にゆりちゃんも世界一のアイドルを目指してる……その為にはやっぱり、
ファンの力は絶対必要だろ?
今のゆりちゃんに必要なものはファンの信頼だと俺は思う……。」
「っ……」
「……憲吾、ゆりちゃんと離れている間は練習に集中するってしただろ?
それが必要だってお前も言ってた……夢を叶えるために……。
それは、ゆりちゃんも同じなんだよ……
夢を叶えるために必要なものは何か、ゆりちゃんもわかってるから……」
「っ……」
「憲吾……」
憲吾はゆっくりと椅子から立ち上がった。
吾郎はそれをしばらく見上げると自身も立ち上がった。
「……決心ついたか?」
「……あぁ、俺は最後まで見届けなきゃいけない。
ここから先は、何が何でも逃げない……。」
真っ直ぐステージを見る憲吾、吾郎はそれに小さく微笑み吾郎もステージに目を向けた。
ちょうど歌が終わりゆり以外のメンバーは舞台裏へ一度消えていった。
そして会場はうっすらと暗くなりメンステ中央にスポットライトが集中した。
そこからゆりが出てくると思われ会場は一斉に視線をそこに向けた。
「っ……」
(ゆり、俺は逃げない……お前は今日一度も逃げなかった。
本当に凄い……俺は一度逃げてしまった……けど、俺ももう逃げない。
最後までずっとお前を……)