第23章 ☆憲吾ルート☆ Happy END後編
「っ……京本さん、荒木さんのところはどうなんですか……まだ何も、
動きはないんですか……東郷かもしれない男は……」
「っはい、まだ何も……ライブがスタートしてから特に動きはありません。
ただステージを見てるだけです……
特に誰を応援ってわけでもなく手ぶらですし……」
「っ……」
(その男、やっぱり東郷なんじゃないか……?
上で高みの見物のつもりかよ……)
もし男が東郷響なら今すぐにでも取り押さえたいと思っている圭吾、
これ以上大切な弟・憲吾が傷つく姿は見たくなかった。
そんな心情を翔は察したのか圭吾に声をかけた。
「葛木警部補、貴方の気持ちは十分理解していますが
今我々がすべき事を再認識してください。
私たちが今すべき事はこのステージを何のトラブルもなく終わらせる事です。
彼が東郷響である可能性はあります。ですが行動は何も移さない……。
彼の正体が掴めるまで、我々も目を離さないつもりです。」
「っ……はい、私情を挟んでしまい申し訳ありません。」
(憲吾のことは、何より一番に考えたい……けど俺も仮に刑事だ……
組織のことが解決しないと、憲吾の問題も解決しないんだよなどのみち……)
圭吾は涙を拭うと再び自分の任務に集中した。
一方で密かに監視をされている響、
ゆりの言葉を聞いて何を思ったのだろうか……
また剛太はゆりの放った言葉に胸を痛めていた。
最初の言葉はとても素晴らしいものだった。だが最後の言葉は
ただゆりが嘘をついてるようにしか聞こえなかった。
ゆりは誰よりも憲吾を想っている、それを理解しながらも
なぜあんな嘘を大勢の前で言うのかと思った……。
「っ……」
(ゆり、何で最後にあんなこと……
お前がファンを大切にしてることはもちろん理解してる。
けど……それ以上にお前は三船のことが大好きじゃねぇか……
俺が生徒を大切にしてる以上にゆりが大切って思うのと
同じくらいお前は三船のことが大切なはずだろ……なのになんで
無理して嘘つくんだよ……)
それぞれが複雑な感情を持つ中ライブは淡々とセトリ通り進む。
間には各ソロコーナーが盛り込まれそのソロコーナー中に
衣装を着替えたりなど会場を飽きさせなかった。
しかしゆりに対する蟠りが取れることは
憲吾たちにはなかった……。