第23章 ☆憲吾ルート☆ Happy END後編
テレビに映っているゆり、ゆりは至って普通に見えた。
だがどことなく虚ろに見えなくもなかった。
「っゆり……少しやつれてるか?」
(やっぱり、あれから大分精神的にきてるよな……)
ゆりの様子を心配する憲吾。
番組収録後、時間が経った後にゆりに連絡を入れたいと思ったが
自分のせいでさらに追い込むことになりかねないと心に留めた。
「っ……俺がちゃんとゆりの彼氏でいれたなら、
少しでも支えてやれるのに……今の俺には、何もできないのかよ……」
(ただこうして、傍観者として見ることしか……)
拳を握りしめる憲吾、自分が何もできないと言う無力さを
痛感させられた気がしてならなかった。
「っゆり……」
_ゆりに、会いたい……。
『ゆりに会いたい。』
ただその言葉だけが憲吾の頭に思い浮かんだ。
そして生放送は何事もなく進みエンディングに入った。
ゆりら出演者はカメラに向かって手を振っていた。
憲吾はただゆりだけを見ていた。
ゆりは小さく微笑みながら手を振っており
少し無理をしているように見えた。
「ゆり……」
(ゆりのパフォーマンスは、普通に良かった。
でもライブで見た時ほどの迫力はなかった……
ただテレビ越しだからなのかわからないけど……やっぱり、
演者のその時の調子によって変わるものなのか……)
自身もスポーツ選手という間柄、体調や調子に左右されることは知っていた。
アイドルもそれは同じでありその時の調子によって変わるものなのだと
ゆりのパフォーマンスを見て憲吾は直感的に思った。
より一層ゆりの容態が心配になった憲吾であったが
今自分が出る幕ではないと言い聞かせ
テレビを消すと食べ終わった食器類をシンクに持っていった。
「ライブまで、もう3週間は切ったのか……事はまだ収まってないのに、
日が過ぎていくのはあっという間だ……」
カレンダーを見ながら呟く憲吾、
憲吾は洗い物をすべく蛇口から水を出し洗い物をすすめていくのだった。
こうして憲吾は何気ない日常をライブ当日まで過ごした……。