第2章 おしおきの話
文句を言っていてもしょうがないと悟ったノンは、静まりかえる脱衣所でいそいそと服を脱ぎ始めた。
夜の冷たい外気にまみれて帰って来ただけあって体温はもちろん、服でさえも冷たいものを感じた。
重ね着していたブラウスを脱いだ瞬間、目の前の鏡にあるものが嫌でも目についた。
紅いそれは何回もつけられたからか大きな痣のようにノンの首筋を痛々しく魅せる。
ノンはそこに指先をあてがい、軽く伝うように這わせた。
昼の出来事が脳裏に鮮明なまでに蘇る。
彼に襲われたことはもちろんショックだったが、それ以上にノンは思い出すだけで罪悪感にかられるような、腸が煮えくりかえるような、。
「……………」
ノンは考えるように首筋をもう一撫で
したあと、忌々しく重たいドアノブをひねり、浴室に入った。