第2章 おしおきの話
「…ちょっ、やめ…っ」
ノンは思い通りにはさせまいと必死に身じろぎしようと試みたが、顔の横に塞ぐかのように置かれていたエレンの手が、ノンの手首を掴み壁に押し付けたせいでノンは本格的に焦った。
____ヤバイ、本当にヤバイ。
ノンはこくりと喉を鳴らし、額にはうっすらと汗を浮かべた。
そんな状態でもノンはエレンの行動を素直に受け入れる気はなく、再度必死に動いて見せるが、男の力にはかなうこともなく、一瞬にして制されてしまった。
「…エレン、…なんで、こんな、こと…」
ノンはついに諦めかけていたが、首筋に頬を当て、いっこうに動かないエレンを不思議に思い、ちからなく言葉を発した。
その言葉にぴくりと反応したエレンは顔だけをこちらに向け、ノンをのぞきこむような体勢になる。
微かに擦れる髪がくすぐったい。
エレンはその金色の瞳でノンの心情を見透かすかのように見つめる。
「…ノンは無防備過ぎんだよ…」
______普段は決して出したことがないような切ない声色だった。
エレンはそういうと、ほんの少し眉を寄せ、再びノンの首筋に顔を埋めた。
微かに吐息がかかった瞬間、ノンは首筋に熱いものを感じた。
それに伴って、ぴくりと小さな痛みも感じた。
その痛みに眉を潜めていると、エレンの手の甲が額に優しく触れる。
目の端にある小さな涙の粒がたまりきれなくなり、頬を伝う。
エレンはそれをそっ、と拭うと、ノンの下唇に親指を這わす。
「……っ、ぁ、」
「……ノンはずるいよな、」
「…ぁ、はな、して…」
「……………嫌だ」
「…もっ、やめ、」
「………ノン…」
エレンはその整いに整った顔を頬を紅潮させ、涙目になっているノンに近づける。
距離は三センチもない。