第5章 幸せな時間
「綾斗ー!」
待ち合わせ場所に手を振りながら柊が近づいてきた。
私服の柊だ・・・
すごく新鮮。
「おはよ。」
「おはよ。仁の家に行くか。」
いつもより遅い時間の電車に乗り、学校の最寄り駅に向かう。
制服を着ないで乗る電車は少し楽しく感じた。
そのくらい楽しみなのが自分でもわかる。
「綾斗、また怪我したのか?」
「あ・・・うん。本当にドジだよね。」
「・・・そういえば、お兄さんいるって言ってたな。一昨日見た時びっくりした。」
今あまり触れてほしくない話しだ。
けどここで話逸らしたら余計に勘づかれそう。
「うん。」
「けど似てないな。凄い大人っぽかったし。」
「兄さんは大学生だよ。それに、僕の家族とは血が繋がってないよ。」
「あ、ごめん。なんか余計な事聞いた・・・」
「大丈夫、仲が悪い訳じゃないから。血の繋がりなんてお互い気にしてないし。」
「なら良かったぁ。」
柊が肩を安心したように撫で下ろす。
「大学は遠いから一人暮らししてるんだけど冬休みに入ったから帰ってきてるんだ。」
「寂しくない?」
「うーん・・・大学って休み期間長いからそこまでないかな。割といること多いし。」
「かっこよかったな・・・お兄さん。」
「・・・そうだね・・・僕もかっこいいと思う。モテてるらしいし。」
「それは羨ましい!じゃあ好きな人と付き合ったりとか簡単だろうな。」
いや、柊も充分かっこいい。
性格もいいし。
「柊ならすぐ恋人できるんじゃない?実際周りに狙ってる人いっぱいいるし。」
「いや、やっぱ好きな人に振り向いてもらうのは難しいよ。少し諦めつつある。」
それって僕にとって好都合じゃ?
でもそんな悲しそうな顔見せられたら・・・
「柊なら大丈夫だよ。自信もって。もっと積極的になってみるとかは?」
「・・・やってるつもりなんだけどな・・・相手にとったらまだ足りないのかもしれないな。」
「柊、頑張れ。」
「・・・ありがとう。」