第1章 出会い
───早朝。
静かな駅のホームでイヤホンをしたまま電車を待つ。
6時30分。
二番のりば。
この場所に毎朝立って眠気と戦う。
来た。
僕の向かい側に立つ同じ歳くらいの高校生。
赤いヘッドホンをして目を瞑る。
風は彼のふわふわとした髪を揺らす。
「まもなく一番のりばに──」
アナウンスと同時に目をゆっくりと開く。
綺麗な瞳をしている。
「・・・かっこいい。」
ボソリと呟く。
彼の前を電車が通りゆっくりとスピードを落とす。
電車に乗り、椅子に座ると再び目を瞑りウトウトとする。
いつもと変わらない彼の姿に思わず微笑む。
僕は1年以上彼に好意を抱いている。
一目惚れだ。
名前も知らない彼。
もちろん話したことだってない。
声も聞いたことがない。
叶わない恋だと知ってる。
だって、彼は男で僕も男。
学校も逆方向。
これから先も話すことは無いだろう。
だから、せめて見つめることだけは許して欲しい。
気持ち悪いのはわかってる。
でも初恋なんだ。
それだけで充分。