第13章 矢野綾斗という男
「君・・・綾斗がどんな奴か知ってるの?」
綾斗のお兄さん。
血は繋がっていないけど、家族同然だと言っていた。
「?どう言う意味ですか?」
言っている意味がわからなかった。
綾斗がどんな奴か知ってる。
だって俺らは付き合っているんだ。
どんな綾斗の秘密も受け止める。
「他の男と寝るような奴と・・・君は付き合えるの?」
・・・は?
他の男・・・?
それって綾斗が浮気してるってこと・・・?
綾斗の兄さんが写真を見せてくれた。
どれも綾斗が犯されているものだ。
1人や2人じゃない。
全部違う男。
「帰ろう、綾斗。」
綾斗の手を引き、お兄さんが連れていく。
信じない。
綾斗はこんなことする奴じゃない。
「こんなの・・・関係ない・・・綾斗、行こう。」
そう、関係ない。
だって綾斗は俺のこと好きなんだ。
きっと綾斗は俺の手を取ってくれる。
「ごめん、真織・・・」
綾斗は俺の手を引き剥がし、家に帰っていった。
綾斗の顔は怯えていた。
あの時の顔と・・・
顔に傷を付けて来たときの顔と同じだ。
この人だったんだ・・・
綾斗が怯えていた人は。
どうして今まで気づかなかったんだ・・・