第10章 特別だから・・・
「真織!」
僕の叫んだ声が廊下に響き、靴を履いている真織に届く。
間に合ってよかった。
「真織!待って!」
「・・・置いてきていいのか?松村。付き合うんだろ?」
「見てたんだ・・・断ったよ。」
靴を履いたまま、真織はこちらを振り向かない。
「真織・・・ごめん。僕やっぱり真織がいないと無理みたいだ。」
「・・・そう・・・」
「だからその・・・また前みたいに・・・一緒にいてくれないかな?」
きっと、こんなんじゃ許して貰えない。
でも気持ちは伝えておきたい。
僕は真織が好きだって。
「俺、綾斗と距離置いて分かったことがあるんだ。」
「なに?」
何を言われるのか予測できずに心臓の鼓動が速まる。
真織にも聞こえてそうなくらいドクドクと脈を打っている。
真織は僕の方を振り向き、靴のまま僕の元へ歩み寄った。
「俺も、綾斗がいないと無理だ。ずっと綾斗のことが気になって目で追ってしまう。他の子から話しかけられると嫉妬してしまうんだ。」
優しく抱きしめられ耳元に話しかけられる。
僅かだが、肩に涙の温もりを感じる。
僕もそれに答えるように抱きしめ返す。
「真織、本当にごめんね。ずっと苦しい思いさせて。」
「俺も少し言いすぎた。それに・・・嫉妬深すぎてごめん。誰かに取られるんじゃないかって不安になるんだ。名前も全然呼んでくれなくて。」
「うっ・・・耳が痛い・・・」
「でも、今はそうやって名前を呼んでくれている。ありがとう。」
「うん・・・あ、そうだ。これ。」
真織に落としていたお揃いのイルカのキーホルダーを返す。
水族館に行った時に一緒に買ったものだ。
「落としてたのか・・・ありがとう。」
返すのが勿体なくなって、真織が手を伸ばしたのに対して手を引っこめる。
「うん?」
「これからも・・・ずっと一緒にいてくれるって・・・約束してくれたら返す・・・何があっても隣にいるって////」
「・・・顔真っ赤にして可愛くお願いされたら断れないな。」
「そこは『当たり前だよ』って言ってよ!////」
「ごめんごめん。・・・離れるわけないよ。」
僕はその言葉を聞いて真織にイルカを返す。
「もし破ったらこれまた取り上げるからね////」
「じゃあ、綾斗も約束な。」
「うん・・・」