第1章 惟任恋記
次の日も午前中なら っと光秀さんが厩へと連れて行ってくれた
一頭の馬を与えられ、早速一人で乗ってみた。
ゆっくり馬を進ませる
「初めてにしては上手いぞ。昨日よほど良い師匠が教えた様だな」
「ええ。口は悪いですけど、腕の良い師匠に教えて頂いて光栄です。」
「そんなに感謝しているのなら、よほどのお礼の品を贈るべきだろうなぁ」
「そうですねぇ……。信長様がこっそり隠している金平糖の場所を教えてあげましょうか?」
「悪巧みをする小娘だな。サルが手を焼くわけだ」
そんな会話を楽しみにながら、近場を一周して城へと戻った。
「忙しいのに付き合ってくれてありがとうございました。」
「 浮世の喧騒から離れて小娘と戯れるのは案外楽しいものだな。さてお礼を頂くとするか・・・。 」
すっと首元に手を添えられて熱い吐息が近づいた
唇が僅かに触れると光秀さんの甘い香りが包み込んだ
暖かい唇が重なって、柔らかい感触に酔いしれる
確かな感触を唇に宛てがわれ、突然の事に動けずにいる私を見て光秀さんが小さく笑った
「恋の“いろは"を教えてやると言っただろう」
えっ・・・。キス・・・された?!
“いろは"ってABCの意味だったの!!
状況を把握すると急に恥ずかしくなって顔を逸らした
なんでキスしたのって聞きたかったのに言葉が出てこない
「ほら、帰るぞ。」
そう言い残して光秀さんは私の手を引いて城内へ向かって歩き出した。
まるで何事も無かったかのように
以前から光秀さんが優しい眼差しで時々、私を見ている気がしていた。
初めは警戒していたけど、時間が経つにつれてもっとこの人を知りたいと思い始めていた
そしてキス された・・・
そんな、キスなんてされたらますます惚れてまうやろー!!
しかもキスしといて、このツンデレ
どうしよう私、光秀さんの事が前からずっと好きだったってバレてたのかな?
光秀さんは?
私に好意を持っているって期待しても良いのかな?
二人の距離が近くなったのを感じながら城へと戻って行った